巨人の「電撃トレード」に球団内部からは「またか」と不満の声も…関係者が明かすリチャード獲得の“不安要素”とは
5月12日、野球界に驚くべきニュースが飛び込んできた。巨人の秋広優人、大江竜聖とソフトバンクのリチャードの2対1のトレードが発表されたのだ。特に話題となっているのが、秋広とリチャードの2人である。【西尾典文/野球ライター】
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主砲・岡本和真の怪我がトレードに与えた影響
秋広は2020年のドラフト5位で二松学舎大付から入団。3年目の2023年には121試合に出場して111安打、10本塁打、41打点の成績を残している。
一方のリチャードは、2017年に育成ドラフト3位で沖縄尚学から入団。昨年までの7年間で一軍通算成績は45安打、10本塁打にとどまっていたが、ウエスタンリーグでは昨年まで5年連続のホームラン王に輝いている。ともに将来の主砲候補と見られていただけに、“電撃トレード”に驚いたファンも多かったのではないだろうか。
トレードが成立した要因として大きいのは、やはり巨人の主砲である岡本和真の怪我による長期離脱だ。チームは現在、首位争いを演じているが、岡本の後に4番を任されたのが吉川尚輝だったというのを見ても、長打力不足は大きな課題となっている。
特に右打ちの大砲候補は大きな補強ポイントであり、トレード成立後にはソフトバンクの城島健司チーフベースボールオフィサー(CBO)が巨人からリチャードをぜひ獲得したいというオファーがあったことも明かしている。
巨人の球団関係者は、今回のトレードについてこう話している。
「一軍での実績はリチャードよりも秋広の方が上で、年齢的にも秋広の方が若いことを考えると本来であれば1対1でもソフトバンクはありがたいと感じていたのではないでしょうか。ただ、巨人は何としても早くトレードをまとめたいという思いがあり、左腕の大江も加えて、早期決着を図ったのだと思います。それくらい岡本の穴を大きく見ていたということの表れでしょう」
球団内にはトレードに反対する声が少なくなかった?
実際、リチャードは、5月13日の広島戦でいきなり7番、サードで先発出場すると、今シーズン初ホームランを含む2安打の活躍を見せて、首脳陣の期待に応えた。少し不利な条件に見えるトレードでも、リチャードを獲得できた巨人にとってはプラスだったと言えそうだ。
しかし、必ずしも良いことばかりではない面もあるようだ。前出の巨人球団関係者はこう話す。
「昨年と今年はたしかにくすぶっていましたが、秋広は高卒4年目で二桁本塁打を放つなど期待の大きかった選手です。球団の中にもトレードに反対する声は少なくなかったと思いますね。また、岡本が怪我したことは確かに痛いですが、若手にとっては大きなチャンスだと感じていた選手も多かったはずです。そこで、いきなりまた外から選手を獲ってくるというのは、若手選手の台頭に蓋をすることにもなります。今に始まったことではありませんし、もちろん補強は必要ですが、選手の間では『またか』という雰囲気もあると思いますね」
オフにも外国人選手のマルティネス、キャベッジを獲得して、ここまで活躍を見せているが、その分なかなか一軍でのチャンスがない選手が出ていることも確かである。また、ソフトバンクについても巨人と同様に実績のある選手を多く補強する球団だけに、秋広にとっても活躍は簡単ではないだろう。
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