弁護士から宗教法人まで…高齢化で激増する「身元保証」「終身サポート」 信頼できる事業者はどう選べばいいのか
身近に頼れる家族がいないという高齢者に、身元保証をはじめとしたサービスを提供する「高齢者等終身サポート」。様々な業態からの事業進出が進んでいるのだが、法規制が追い付いていないがゆえに、倫理観に欠けた事業者も乱立しているという。前編の記事【契約書に「全ての財産を遺贈する」の文言が… 高齢者を食いモノにする悪徳「身元保証サービス」の驚くべき実態】では、“玉石混交”となる業界の実態に迫った。後編では、直近で起こっている訴訟の事例や、適切な事業者の選び方などについて詳述する。
(前後編の後編)
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【写真】身元保証会社への「財産の贈与」に国も注意喚起!?「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」のチェックリスト30項目
高齢者等終身サポートをめぐっては、多くの利用者の救いになっている反面、「受けていた説明よりも高額になった」「付帯されているはずのサービスが提供されていない」など、契約に関する様々なトラブルが報告されている。そんな中でも大きな問題に陥りがちなのが、「寄附」という業界の慣例だ。事業者の一人、株式会社あかり保証の清水勇希弁護士が言う。
「我々が提供するサービスの利用者は、身寄りのない高齢者が中心です。そのため、これといった遺産の相続先がない方の場合、『死後は財産の一切を贈与する』という契約を結んで財産を全て譲り受けている事業者もいるんです。もちろん、利用者様の意思であれば尊重されるべきだとは思いますが、いかにして遺産の相続先にしてもらえるかと血眼になっている事業者や、そもそも寄附を前提とした契約しか結ばないという事業者もいるのが実態です」
弁護士が主体となっているあかり保証は「寄附、贈与は一切受け取らない」と定めているというが、
「ひどい場合では、死因贈与について利用者様の理解が及んでいないままにサインをさせてしまう事業者もいて、訴訟も発生しています。たとえば令和4年には、事業者に財産を贈与する旨が記載された契約は一方的で不当であるなどとして、事業者側に敗訴の判決が下されています。あるいは遺贈に関するものではありませんが、令和2年、アルツハイマー型認知症を患っていた利用者との契約が無効であるとして、提訴された事業者側が敗訴した事例もあります」
把握できる事例は“氷山の一角”
本来、認知症など判断能力が低下した人には、国の制度によって後見人がつくのが一般的だ。しかし申し立てがなされておらず、認知能力が低下していることにつけこんで、本人に財産贈与のサインをさせてしまうこともあるのだという。
「利用者の属性からして、訴訟などによってトラブルが顕在化するのはむしろ少数。我々が認識できる事例は氷山の一角だと思われます。本当にお困りの方のために始めた事業なのに、倫理観に欠けた一部の事業者によって業界全体が悪い見られ方をしてしまうのは、本当に苦しいところがあります……」
2023年に行われた総務省の調査によれば、「高齢者終身サポート」の事業者の母体は、弁護士や司法書士などの士業から介護サービス業、葬儀業、不動産業、コンサルティング業、宗教法人まで様々。そして調査対象となった400ほどの事業者のうち、協力を得られたのは半分程度。業界横並びの基準もない上、それぞれがどのように事業を展開しているのか、はっきりと見えていない状態なのだ。
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