弁護士から宗教法人まで…高齢化で激増する「身元保証」「終身サポート」 信頼できる事業者はどう選べばいいのか

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「ガイドライン」ができても……

 かような混沌ぶりに国も重い腰を上げ、昨年には事業者向けの「ガイドライン」が作成された。

『老後ひとり難民』(幻冬舎新書)、『自治体が直面する高齢者身元保証問題の突破口』(第一法規)などの著書がある、日本総合研究所の沢村香苗氏によれば、

「いわば無秩序な状態だったがゆえに様々なトラブルが発生していた業界だったのですが、2024年6月、内閣府や法務省、厚労省など多くの省庁の連名で、『高齢者等終身サポート事業者ガイドライン』が発表されました。事業者が遵守すべき法律上の規定や留意すべき事項等が整理されたという意味で、“まずは第一歩”といったところでしょうか。とはいえ、実際に法的規制はまだできておらず、実効性が出てくるのはこれからでしょう」

 先の清水氏も、

「これまでは何の基準もなかったわけですから、ガイドラインが制定されただけでもポジティブにとらえていますが、罰則などはないですし、これが事業者全員に届いているのかも定かではない状態です。業界の健全化に向けて、私も情報発信を続けなければと考えています」

 なお目下、業界団体の設立に向けた動きも進んでいるようだ。

「いくつかの事業者が主体となって、業界団体設立のための準備委員会が今年立ち上がったところです。私もアドバイザリーボードの一員を務めていますが、賛同する事業者がどれくらい集まるかが目下の課題といえるでしょう」(沢村氏)

信頼できる事業者の選び方

 つまり業界の健全化は道半ば。しかしすぐにでも同サービスを必要とする高齢者は増えるばかりだ。こうした中で、我々はどのように事業者を選んでいけばいいのだろうか。沢村氏によれば、

「まずはその事業者にご自身が何を求めるのか、明確にすべきだと思います。たしかに『身元保証から死後のことまで丸ごと頼める』というのは便利かもしれませんが、依頼内容が曖昧であるからこそ、事業者との間で齟齬が発生したり、不要に高額な契約になってしまったりしがち。本当に必要なサービスは何で、それに対する料金はいくらなのかと、契約内容はできるだけ明瞭にする必要はあると思います」

 また「1社に頼りすぎないことも重要」と続ける。

「多くの身元保証会社はまだ事業開始から日が浅く規模も小さいため、20年後、30年後にも事業が難なく存続しているとは限りません。リスクを分散させるという意味でも、一つに集約しないという考え方はあっても良いのではないでしょうか。日常のサポートは介護サービスにお願いして、死後の事務手続きは司法書士にお願いすることだってできるわけです。その意味では、途中で解約する際の決め事や返金額も納得できる中身になっているか、確認しておくとよいと思います」

 事業者当人である、先述のあかり保証・清水氏にも見解を求めると、

「サービスと利用料金が明確な契約になっていることは大前提だと思います。当社も、身元保証や死後事務などサポート内容ごとに料金を明瞭化するよう努めています。また、運営母体が安心できるところかを確認しておくのもよいでしょう。我々弁護士のほか、様々な出自の事業者がいますからね」

 預託金の管理方法についてもこう指摘する。

「預り金を信託口座で管理しているかどうかを一つの基準にするのも有効だと思います。自前の口座ではなく第三者の口座できちんと管理されていれば、仮に事業者が倒産するようなことがあっても資産は守られるというわけです」

 身元保証をはじめ、今や多くの人が“他人事”と断ずることはできないであろう終身サポート問題。まだまだ利用者側が目を養う必要がありそうだ。

 前編の記事【契約書に「全ての財産を遺贈する」の文言が… 高齢者を食いモノにする悪徳「身元保証サービス」の驚くべき実態】では、高齢者終身サポートをめぐって発生した過去の事件や、消費生活センターに寄せられている相談事例なども交え、業界の“玉石混交”ぶりについて詳述している。

デイリー新潮編集部

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