プロ野球今週の「隠れた勝利の立役者」 阪神ファンを沈黙させた“育成経験投手”、日本記録に王手をかけた“鉄腕”の渋い活躍も

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打率は2割台だが、出塁率が.350超えの選手

 一方の野手では、小深田大翔(楽天)を挙げたい。5日のロッテ戦は両先発投手の好投もあって、5回まで1対1のロースコアの展開となる。迎えた6回表、ワンアウトから小深田は四球を選んで出塁すると、すかさず盗塁を仕掛けてこれが相手捕手の寺地隆成の悪送球も誘い、一気に三塁へと進む。

 そして続く浅村栄斗の放ったショートゴロに対して素早くスタートを切り、間一髪でホームに生還して見せたのだ。試合はこれが決勝点となり、楽天が2対1で逃げ切っている。

 この日のロッテ先発の田中晴也は球威、制球ともに抜群で、楽天打線はわずか2安打しか放つことができなかっただけに、小深田の足で奪ったこの1点の価値は非常に大きかった。

 小深田はここまで打率こそ.243と目立たないが、チームトップの17四球を選ぶなど、出塁率は.352と高い数字を残している。また、11盗塁は12球団でトップであり、29歳となっても、脚力は全く衰えるところを見せていない。ドラ1位ルーキーの宗山塁や、昨年ブレイクした村林一輝に注目が集まっているが、小深田のしぶとさとスピードはチームにとって欠かせないものであることは間違いないだろう。

 野球ではどうしても長いイニングを投げる先発投手やホームラン、長打といった華々しいプレーに注目が集まることが多いが、それ以外にも注目に値するプレーは少なくない。田中のように、長年苦しんだ選手がチャンスをつかむこともプロ野球の醍醐味と言える。これからもそんな目立たないプレー、選手にもぜひ注目してもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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