「何点取られても堂々と帰ってこい」…「西口監督」就任で“今年のライオンズは何かが違う” 選手に求める“強い気持ち”の正体とは
3度の幻の大記録
西口監督は1994年にドラフト3位で入団後、西武一筋21年で、通算182勝。「伝家の宝刀」とも呼ばれた、切れ味の鋭いスライダーを武器に、プロ入り2年目から7年連続2ケタ勝利。FAもせず、契約更改も基本的に一発でサイン。ライオンズ愛を貫いた「レオのレジェンド」と称される同監督を語る時に、必ず言われるのが「悲運の大エース」。
2002年8月26日のロッテ戦。9回2死まで1四球ながら、中前安打を打たれた。
05年5月13日の巨人戦。1死球で9回2死まで来たものの、本塁打を打たれる。
同じ05年8月27日の楽天戦。9回終了までパーフェクトに抑えるも、打線の援護がなく試合は延長に。10回表に安打を打たれて、偉業達成とはならなかった。
もう一つ、ファンにとって忘れられないのが、2015年9月28日、本拠地・西武プリンスドーム(当時)で行われた引退試合だった。この試合も観戦したという前出のファンは、
「対戦相手のロッテとはCS進出をかけた試合でした。西口さんは1点ビハインドの5回2死で登板。打者は後にロッテ監督となる井口資仁(50=現解説者)さんでした」
初球から4球続けてストレートで2ボール2ストライク。外角へ逃げるスライダーで勝負したが、フルカウントからの6球目、121キロの“決め球”スライダーは外角低めに。
「井口さんは打球を見送りました。スタンドから見ていて、西口さんに気を遣ってくれたのかなと思いました。しかし、球審のコールはボール。マウンドの西口さんも“えっ!?”という表情でした。中継で解説を担当していた西武OBの“兄やん”こと、松沼博久さん(72)は『この場面で今のボールを、なぜボールと言うか?』と絶叫していました。それぐらい、際どい球でした」
試合後のセレモニーで西口監督は、監督・コーチ、スタッフや選手たちへの感謝の言葉を述べた後、こう切り出した。
「ファンの皆様……ノーヒットノーラン、未遂2回。完全試合、未遂1回……そして今日、ファーボール……ファンの皆様の期待を裏切ることもたくさんありましたが…」
球場内は笑いに包まれた。
「引退会見では、200勝に届かなったことについて“悔いはない”と語り、3度の記録達成については“現役時代は運を使わなくてよかったと思ったけど、今思えばやっておけばよかったかな”と語っていましたが、終わったことは“気にしていない”という姿勢でした。基本的にひょうひょうとした性格というのか、喜怒哀楽を出すタイプでもありません。ただ、実績は申し分ない。引退翌年からコーチとして後進の指導に当たりましたが、球団は将来の監督候補と考えていたと思います」(元西武担当記者)
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