「何点取られても堂々と帰ってこい」…「西口監督」就任で“今年のライオンズは何かが違う” 選手に求める“強い気持ち”の正体とは

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 5月11日までのロッテ3連戦を、いずれも完封で勝ち越し。同一カード3連続完封は西鉄時代以来(56年7月)というが、埼玉西武ライオンズに勢いがついている。

 5月6日に行われたソフトバンク戦で、埼玉西武の西口文也監督(52)は、先発に2年目右腕の上田大河(23)を送った。しかし、1回に4失点。4回までにさらに2点を取られてもベンチは上田を続投させた。結果、さらに4点を取られ、5回12安打10失点でKO。試合後、コメントを求められた西口監督は、こう述べた。

「初回にまず4失点して、マウンドから降りてくる時に下を向いていた。ああいう時は、4点取られてしまったけれども、そこでうつむいて下を向いて帰って来るんじゃなくて、あそこはもう、堂々とマウンドを降りてきて欲しかった」

 すでに6失点ながら、相手にどう向かって行くのかを見たいと思い、5回も続投させたという。その際、上田に「5回は3者凡退で押さえて、堂々と帰ってこいよ」と送り出したという。しかし、先頭から四球を与えてしまう。

「10失点ということもあって、マウンドから降りてくる姿が常に元気がない。顔に覇気がなかったんで。そこは何点取られようが、堂々として帰ってこいよと」

 西口監督はベンチで上田の頬をツンツンしながら、さらに肩を叩き励ましていた。

「この日と前日の5日はチケットが完売で、“満員御礼”が出ました。4月末から6連勝するなど、チームも上り調子だったので、好試合を期待していたのですが、完全なワンサイドゲームに。まるで上田がさらし物になったような気もしましたが、試合後の西口監督のコメントを聞いて安心というか、納得しました。今年のライオンズは何かが違う。その一番の理由は、西口さんが監督になったことです」(球場で観戦したファン)

 4月終了時点で西武は13勝12敗、勝率5割2分で3位につけている。開幕こそ、北海道日本ハムに3連敗したが、

「今年も厳しい感じだなぁ……と思っていたのですが、負けたとはいえ、すべて2点差以内で内容的にはいい試合ばかり。他の試合でも、昨年はあまり見なかった2死からの盗塁や、先行されるとダメだった打線が終盤で追いついたり、同点に迫ったり、土壇場で代打を続けるなど、作戦面でも大きく変わった印象があります」(同)

 ライオンズファンには、もう目にするのも嫌なデータかもしれないが、昨季の西武は球団史上ワーストとなる49勝91敗3分けで勝率3割5分。優勝したソフトバンクとまったく逆の成績で、「合わせ鏡の勝敗数」と揶揄された。総失点485は、リーグ2位の日本ハムと同じではあるが、総得点350は、ソフトバンクの58%(607点)、5位オリックスの87%(402点)と、差が開いた。チーム打率は2割1分2厘(球団ワースト)、本塁打も60本に終わった。

「守りの野球」を掲げる西口監督だが、「長期的視点でチーム再建を」「再上昇は見込めないので、ファンも我慢の時」など、開幕前のシーズン予想では、厳しい意見や指摘が相次いでいた。それが(……もっともまだ開幕して1カ月ではあるのだが)リーグ3位である。

 打撃部門では外野手の西川愛也(25)が打率と安打がリーグ3位(2割9分4厘、37)、盗塁は2位(9)と、一人気を吐く一方、投手部門では今井達也(27)が防御率リーグ1位(0.59)、隅田知一郎(25)が3位(1.15)、高橋光成(28)が8位(2.12)。勝利数は隅田が1位(4)、セーブ数では平良海馬(25)が1位(7)奪三振数は今井が2位(45)、勝率は隅田が4位(.800)と、投手陣の力が好成績を支えていることが分かる(成績はいずれも5月8日現在)。

「守りの野球」はできている。あとは打線だ。指揮官はどんな構想を描いているのだろう。

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