結局、「すし職人」に長い“見習い期間”は必要なのか プロの職人が明かす「修業中に失敗をし尽くすこと」の重要性
女性職人の増加
人手不足の現場でもう1つ共通して起きるのが「女性の誘致」だ。すし業界でも昨今、女性の職人が少しずつ増えつつある。
そもそもこれまで女性のすし職人がいなかった理由は何だったのか。
業界内では「女性は体温が高いので生魚を扱うのに適していない」「女性には生理があり、気分に波があるので均一な仕事ができない」という女性蔑視でしかない俗説が出回っているようだが、ある高級すし店の店主はこれを真っ向から否定する。
「すべての女性が男性より体温が高いというわけではありませんし、職人は自分の手の届くところに『手酢』という酢を用意し、絶えず両手を酢で湿らせています。これは殺菌消毒するだけでなく、手のひらを冷やす効果もある。男性であれ女性であれ、手の体温は下げられます」
「『気分に波がある人は職人になる資格がない』なんてしていたら、誰も職人になんてなれませんよ(笑)。職人業は体力的にきつい仕事なので、慣習的に女性を受け入れない文化が業界にはあったんだと思います」
今年4月、フランスの首都パリにあるすし店が、女性職人が握るすし店としてミシュランガイド史上初となる星を獲得。同店ですしを握る日本人女性に国内外から大きな称賛が集まった。
日本の国民食「すし」。人手不足のなか、日本の伝統は守りつつ、インバウンドや世界のすし店に少しでもその味と技術を届けるには、働き手も多様化していく必要があると彼らの話を聞いて感じたのだった。
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