今年も打てない!中日の“極貧打線” 球団関係者が嘆く「監督交代」だけでは解消できない「根深い問題」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

 昨年まで球団ワーストとなる3年連続最下位に沈んでいる中日。井上一樹新監督を迎え、4月29日からは4連勝を飾り3位に浮上したが、直後に4連敗を喫して5位に転落するなど、一進一退の戦いが続いている。そんな中日の昨年までと変わらない大きな課題が得点力不足だ。今年もチーム打率.210、チーム出塁率.273、チーム長打率.291、1試合あたりの得点2.16は、いずれも12球団で最下位である(5月7日終了時点)。【西尾典文/野球ライター】

 ***

期待されてきた「中軸候補」が一向に育っていない

 5月5日のDeNA戦で、昨年チームトップの156安打、23本塁打、67打点をマークした細川成也が太ももを痛めて登録抹消された。早期復帰の見通しは立っていない。それに加えて、昨年細川に次ぐ111安打を放った福永裕基は、開幕直前に膝を痛めて、いまだに実戦復帰を果たすことができていない。彼らの不在もあって、今後も得点力不足に悩まされる可能性が高そうだ。

 ただ、故障者の離脱以上に問題視されるのは、期待の中軸候補が一向に育っていないことではないだろうか。井上監督が期待して4番として起用されていた石川昂弥は、開幕から一向に調子が上がらず、13試合の出場で打率.160、0本塁打。4月12日には登録抹消された。2021年ドラフト1位のブライト健太と2位の鵜飼航丞も、定位置を獲得できていない。

 さらに、過去を振り勝ってみても、平田良介や堂上直倫、高橋周平らアマチュア時代に世代を代表する強打者だった選手が、中日入団後、期待通りの成長を見せていない。

 ちなみに1997年にナゴヤドーム(現在の名称はバンテリンドームナゴヤ)に本拠地を移転してから、中日の生え抜き選手で30本塁打以上を記録したのは福留孝介だけである。球界全体として投高打低の傾向が強まっているということもあるが、ここまで強打者タイプの選手が育っていない球団も珍しい。

「素材の良い選手が入ってきても、育成するノウハウがない」

 その理由として、球団関係者は過去の“黄金期”の影響と、環境が大きいのではないかと話す。

「落合(博満)監督時代はFAで加入した和田一浩、あと外国人選手のウッズ、ブランコらが在籍しており、長打は、彼らに任せておけば良かった。福留も入団した時点で、ある程度、完成していましたよね。はっきり言って、20年以上もスラッガーを育ててこなかったわけです。素材の良い選手が入ってきても、育成するノウハウがない。これが大きいのではないでしょうか。アマチュアの選手はいくら力があっても、プロの投手のレベルに苦しみますが、加えて本拠地のバンテリンドームは広くてフェンスも高く、二軍本拠地のナゴヤ球場もその規格に合わせているので、簡単にホームランが出ません。そうなるとどうしてもバッターが自信を失ってしまう。堂上もそうでしたが、高橋も石川も年々ホームラン打者らしさがなくなっているように見えますね」

 平田は通算105本塁打を放ったが、キャリアハイは15本塁打にとどまっている。堂上や高橋、石川は二桁本塁打を記録したシーズンは1年しかない。これだけ期待されたドラフト上位指名のスラッガー候補が育っていなければ、チームが得点力不足に陥るのも当然と言えるだろう。

次ページ:「何をするにも、とにかく対応が遅い」

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。