「森保ジャパン」W杯ベスト8進出のカギを握るのは「最終予選の残り2試合」…「決して“消化試合”ではなく勝利が絶対条件」と専門家が断じる理由

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 世界最速で8度目のW杯出場を決めた森保ジャパン。指揮官も選手も「優勝」もしくは「ベスト8以上」を北中米W杯の目標に掲げている。日本の「優勝」を予想(あるいは期待)するサッカーファンは皆無に近いだろう。しかし「ベスト8以上」となると、あながち夢ではないかもしれない。(全2回の第1回)【六川亨/サッカージャーナリスト】

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 森保一監督がW杯の「優勝」を初めて口にしたのは23年6月のことだった。同年3月の代表期間中に選手から「目標をてっぺんにしないんですか」という意見が出たという。

 日本代表はベスト8の壁に跳ね返されること4度。森保監督自身もコーチと監督として壁を2度経験している。そこで森保監督は「高みを目ざして戦っていける。レベルアップしていけるという意欲を選手たちに与えてもらった」と目標を修正した。

 ただし、これはレトリックであり、日本の最大の目標はベスト8進出に変わりはない。ただ、「ベスト8」を目標にしていたら、達成した時点で満足してしまう可能性もある。

 目標を高く設定することで、さらなる「高み」を目ざそうという意思表示だ。

 02年日韓W杯で日本にはあるノルマがあった。「W杯開催国は最低でもベスト16進出」という過去の歴史だ。

 そしてフィリップ・トルシエ監督に率いられた日本は、見事にグループリーグを1位で通過して決勝トーナメントに進出。日本は開催国がグループリーグ敗退という不名誉な記録は回避することができた。

 ラウンド16の相手はトルコだったが、トルシエ監督は「ここから先はご褒美だ」と選手を労った。

ベスト8は2連勝が必要

 指揮官も初めてのW杯だった。ベスト16進出の重圧から解き放たれ、選手をリラックスさせるための発言だったかもしれない。

 その一方で、地元開催での目標達成で選手には微妙な温度差が生じていた。W杯初のベスト16進出は、それだけ選手にとって大きなプレッシャーでもあった。

 解放感から、勢いに乗って勝ち進むのか、それともあっさり負けてしまうのか。

 結果は後者であり、残念ながらトルシエ監督にベスト8から先のゲームプランがあったとは思えなかった。

 話を森保ジャパンに戻すと、目標設定を高く掲げることは賛成だ。

 海外リーグで主力として活躍する選手たちの“肌感覚”からしても、W杯のグループリーグを突破するのは最低限の目標となっているだろう。

 問題はグループリーグ突破後の戦いだ。

 これまでなら決勝トーナメントの初戦、ラウンド16で勝てばベスト8に進出できた。しかし北中米W杯から参加国は48に増えたため、ラウンド32とラウンド16を2連勝しないとベスト8には到達できない。

 グループリーグからラウンド16を数えれば5試合の連戦になる。これはかなりハードなスケジュールだろう。

 その一方で、参加国の増加により、大会のレベル低下も指摘できる。カタール大会は予選で敗退したイタリアやコロンビア、パラグアイといった古豪が復活する一方、ニュージーランドのような「アウトサイダー」(編集部註:本命や対抗ではなく、大穴扱いのチーム)も出場するからだ。

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