強盗殺人で「無期懲役」、強盗で「懲役20年」、逮捕歴7回の“荒くれ者”も…ダークサイドに堕ちた元プロ野球選手を振り返る

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右肩を故障してから始まった「転落人生」

 有期刑上限の懲役20年の判決を受けたのが、元巨人の捕手・松岡正樹である。平安高時代は1990年夏の甲子園で本塁打を記録するなど、強肩強打の捕手として活躍したが、ドラフト3位で巨人入団後は、ケガなどで1軍出場をはたせないまま、95年に退団となった。

 そして、2005年1月に奈良県香芝市でタクシー運転手を包丁で脅して現金5万7000円を強奪した強盗容疑で、5月17日に共犯者2人とともに逮捕された。さらに04年8月から05年3月にかけて奈良県と京都府で、乗客を装ってタクシーを走らせ、人気のない場所で運転手を縛って殴るなどの手口で計10件の強盗事件を繰り返し、計45万円余りを奪っていたことが判明。「ほかにも窃盗などを繰り返し悪質。元プロ野球選手として尊敬されていたことから犯行を主導した」として、06年12月に懲役20年の判決を受けた。

 計6度にわたって逮捕されたのが、元ソフトバンクの外野手・伊奈龍哉である。

 近江高時代に高校通算74本塁打を記録し、“伊奈ゴジラ”と呼ばれた長距離砲は、07年に高校生ドラフト3巡目でソフトバンク入団、将来の4番候補と期待されたが、右肩を故障し、たった1年で解雇された。翌08年は四国・九州アイランドリーグの徳島でプレーも、出場5試合で退団。ここから転落の人生が始まる。

 2011年2月、前年4月に兵庫県洲本市の競艇場で知人女性のバッグから現金4万円入りの財布を盗んだ容疑で逮捕されると、釈放後の11年3月にも福島県南相馬市で電柱の電線約10メートルを切断して盗んだ疑いで2度目の逮捕。14年8月には福井県内で小型船舶用の船外機3台を盗み、同年9月にも兵庫県南あわじ市内の駐車場で知人女性から借りた乗用車を横領し、他人に引き渡した疑いでいずれも逮捕された。

 その後、原田姓に変わり、兵庫県洲本市の会社役員だった23年8月に窃盗未遂で逮捕されたが、島内を車で回り、空き家に侵入するなどの手口で、84件総額約472万円の窃盗事件を起こしていたことも判明して追送検。さらに前記の容疑で公判中の24年2月にも、金属スクラップを買い付ける名目で1300万円をだまし取ったとして詐欺容疑で6度目の逮捕となり、5月に懲役4年6ヵ月の実刑判決が下った。

自ら「プロ野球最多逮捕者」と名乗る者まで

 上には上がある。元巨人のドラフト2位左腕・宮本武文は窃盗、風営法違反など7度の逮捕歴があり、自身のユーチューブチャンネルでも「プロ野球最多逮捕者」と名乗っていた。

 巨人といえば、1997年に逆指名のドラフト2位で入団した150キロ左腕・小野仁も、2023年5月、横浜市のスーパーでウイスキー7本を盗んだ窃盗容疑で逮捕された。

 前年にも窃盗で有罪判決を受け、執行猶予中だったことから、23年11月、懲役1年4ヵ月の実刑判決を受けた。

 ほかにも覚せい剤取締法違反なども含めて、多数の元プロ野球選手が逮捕されているが、冒頭の米田氏のように缶酎ハイ2本(販売価格303円)を万引きするという比較的軽微な犯罪でも、「あの名選手が……」とマスコミの扱いはいやがうえにも大きくなる。

 現役引退後も“選ばれし者”の肩書が一生ついて回るのも、元プロ野球選手の宿命なのである。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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