暴行容疑で書類送検のデヴィ夫人が「年下女性」とばかりトラブルになる理由 背景に「地位の高い男性と関係を持つことが女性の名誉」という思想か

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 4月16日、デヴィ夫人ことデヴィ・スカルノ氏(85)が暴行容疑で警視庁に書類送検されたことが報じられた。過去にも2度、暴行容疑が報じられたデヴィ夫人だが、相手は毎回「年下の女性」ばかり。この背景に見え隠れする彼女の思想とは――。【冨士海ネコ/ライター】

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 広末涼子さんは元夫に「2年に1回くらい、心の安定を崩してしまう」と心配されていたが、デヴィ夫人もひどく感情的になってしまう周期があるのかもしれない。年下の女性に対する暴行容疑が報じられるのは11年ぶり3度目。16日に女性スタッフにシャンパングラスを投げつけた疑いで書類送検されたが、2014年には番組出演者の女性に平手打ちを3発お見舞いしてもめ、最終的に示談となっている。1992年には元フィリピン大統領の孫娘に37針縫う大けがを負わせたかどで、禁錮刑も食らった。かつて著書では「貴婦人の平手打ちは、社交界の常識でございますのよ!」との持論を展開していたこともあり、社交界って怖いなと凡人は思うばかりである。

 けれどもそんなトンデモ持論を繰り出せる感覚こそ、デヴィ夫人がテレビ界で愛されてきた理由でもあっただろう。夫人を一躍売れっ子にしたのは、「愛する二人別れる二人」(フジテレビ系)や、「快傑熟女!心配ご無用」(TBS系)といった、一般人のお悩み解決番組での堂々たる振る舞いだった。悩みを聞くというより持論を展開し、時に美川憲一さんなど共演者とも口げんかを始めるような強気さは、視聴者にもテレビ業界にも新鮮に受け止められたはず。泣くほどに悩む相談者だろうと突き放し、降板すると告げて途中退出する。好感度商売のタレントなら決してやらない型破りな行動を取っても、何度も引き留められてきたのは、その美貌だけでなく元インドネシア大統領夫人という肩書による影響もあったに違いない。日本の常識では測ってはいけない人という、ある種の治外法権を与えられたタレントとして存在することを許されてきたのだ。

 そうした特別扱いに慣れてきた夫人にとって、自分を否定するような言動を取る人間の方が非常識で世間知らずに見えてしまうのかもしれない。今回の報道でも「何が何でも“暴行事件”にしたいのですね」と警察署の対応を非難。そして夫人は公権力だけではなく、自分と同じ業界にいる有名人にも容赦しない。とりわけ、地位の高い伴侶を持たない未婚女性には辛辣だ。

 財力と権力のある男性が最も偉くて、女性の価値はそういう男性にいかに愛されているかで決まる。夫の勤め先での序列で妻たちの序列まで決まるような、まるでひと昔前の「駐在妻カースト」のような価値観が、夫人に根強くあるように見えるのだ。

こじるりや叶姉妹との確執……ブログでも垣間見られる古い「駐在妻カースト」価値観

 年下女性に対して激高したデヴィ夫人、という報道で、わたしが思い出したのは小島瑠璃子さんとの一件である。2013年11月に放送された「さんま&くりぃむの芸能界(秘)個人情報グランプリ」(フジテレビ系)内の「ちょっと意外な特技部門」にて、華麗なポールダンスを披露したデヴィ夫人は、3連覇を小島さんによって阻まれたとブログで訴えた。番組MCの明石家さんまさんから「審査委員長」に指名された小島さんは、腹踊り芸を披露したアニマル浜口さんをグランプリに選出。番組は盛り上がるもデヴィ夫人の怒りは相当なものだった。オンエア2日後に書かれたブログのタイトルは、〈番組を台無しにした整形疑惑のKYタレントK.R〉。「得意気に」「さんまさんと くりぃむさんを 差し置いて」「いい気になって」と、小島さんの態度に反感を示している。

 当時の小島さんは未婚。デヴィ夫人基準で言えば、どんなにバラエティー番組で活躍していようと、大統領夫人の自分や長者番付常連のさんまさんよりは「格下」のはず。その下っぱが自分の一存で振る舞うなんて非常識も甚だしい、と捉えたのだろう。とはいえ、整形疑惑とまで言うのは、さすがに行き過ぎのように思うのだが。

 また叶姉妹とも因縁がある。2009年5月に、叶姉妹が共演NGを出したという報道があった時は、「私が何故 叶姉妹と一緒にされるのかしら。次元が違うでしょう」とご不満な様子。「叶姉妹、自信がないのかしら。劣等感…」「冴えないサイボーグ美女姉妹、というところかしら」という書きっぷりは、小島さんの時と同じだ。いかに相手が身の程知らずで、人工的な容姿なのかを強調している。翌月には共演する機会があったようでトーンは一転、叶姉妹は美人で才覚があると褒め、交流が少しはあることも明かした。しかし最後には恭子さんに向けて「虚栄嘘が目立ちすぎています。早く世間に通用する存在になるといいですね」とピシャリ。ちなみに叶姉妹側のブログでは、デヴィ夫人を「いつお会いしても、とても優しく、優美」と一貫して持ち上げ、「歴史に残るべき、美しい方」と評する恭子さんの発言も紹介されている。

 デヴィ夫人は、名もなき一般女性にも容赦のないコメントを浴びせる。実刑判決が下された元柔道金メダリストの強姦事件では、被害を訴え出た女性を「ふられた腹いせに被害を訴えた可能性も」「嬉しかったかもしれません、他の女性を出し抜けて」と批判。男性アイドルグループの元メンバーによる未成年女性に対しての淫行が報じられた時は、「たかがキス位で無期限謹慎なんて厳しすぎ、 騒ぎすぎ」と男性側を擁護した。当然ながら、現代においては、こうした物言いこそ二次被害を生むものとして厳しく批判されるものだ。

 しかし、やはりここでも、業界で有名な男性と関係を持つことは女性にとって「名誉」であり、それが女性の序列の中で上位にいく方法だという、デヴィ夫人の「駐在妻カースト」的思想が垣間見えるような気がするのだ。大使夫人が一番偉くて、次が参事官夫人、その次が……という夫のヒエラルキーがそのまま女性同士の人間関係に反映される、という思想である。

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