素の存在感だけで駆け上がった「謎の怪芸人」 大河ドラマ「べらぼう」にも出演 「異物×無垢」の輝き

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異様な緊張感と笑い

 心霊スポット企画では、仕掛け人の立場で過剰に怖がる演技をしているはずの彼が、なぜか本当に小便を漏らしてしまうというサプライズもあった。戸惑ったり怖がったりする彼の姿が画面に映るだけで、異様な緊張感と笑いがもたらされる。見る者の想像を超える彼の素の表現力は、いわゆる「芸」を超えた芸であり、多くの視聴者を魅了した。

 そんな彼には「キャラを作っているのでは?」という疑惑が投げかけられたこともあり、それを検証する企画が行われたこともあった。ただ、そこでも彼がイメージとは違うような部分をさらけ出すことはなく、「謎の怪芸人」という印象は保たれたままだった。

 ひょうろくは見た目のインパクトが絶大である。スキンヘッドに微妙なファッションセンス。表情には常に「困っている感」があり、何をしていても絵になる。

 見た目で個性をアピールしてきた芸人はこれまでにもいるが、ひょうろくの場合、外見で何らかの特定のイメージを与えるというより、何のイメージもつかませず、ただ不気味さと違和感だけを残すところが魅力的だ。そこにいるだけで異様な違和感が生まれ、それが笑いに転化される。ひょうろくは「説明不能であること」によって輝く芸人であり、それが唯一無二の個性となっている。

 さらば青春の光の森田哲矢は、彼を初めて見たときから俳優としての魅力を感じていた。実際、俳優としてのひょうろくはそのたたずまいだけで見る者をひきつける力があり、大河ドラマに抜擢されたのも納得できる。今後も俳優業を中心にさらに仕事を増やしていくだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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