トランプショックを待たずに「暗いトンネル」突入の韓国経済 第1四半期マイナス成長が示す「縮む」時代の幕開け

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異様に高い輸出依存度

 ただ、「対米・対中輸出の割合が高い」ことだけに注目すると読み誤ります。韓国の対米・対中輸出はいずれも全体の20%弱です。一方、日本は20%と17%前後。そんなに変わりはありません。

 大きく異なるのは輸出への依存度です。日本の輸出額はGDPの17%程度ですが、韓国は50%弱を占めるのです。つまり、韓国経済は世界経済の動向に大きく――日本と比べれば3倍も――左右されます。関税戦争の大波が韓国により激しく降りかかってくるのも当然なのです。

 逆に言えば、韓国経済は輸出の好調さえ続けば、生産年齢人口の減少という弱点をある程度カバーできてきた。人口減少による経済の縮みをさほど警戒してこなかった理由も、ここにあるのでしょう。

 生産年齢人口が6年も前にピークアウトしたというのに、韓銀総裁が今頃、「暗いトンネル」と警告を発しているのですから。

「下から目線の反日」に先祖返り?

――韓国経済が縮むとどうなるのでしょうか?

鈴置:韓国人の自画像がどう変わるか、に注目しています。21世紀になった頃から「民主主義や法治など政治面では日本より成熟した」という意識が韓国には広がっていました。

 その結果、20世紀までの「下から目線の反日」が急速に「上から目線の卑日」へと変わりました。韓国社会では「上」の人間が「下」の人間を露骨に見下すのが普通です。2024年末からは韓国メディアが「1人当たりGDPでも日本を超えた」と報じ始めました。

「縮む韓国」をようやく自覚した人々が今後「下から目線の反日」に戻るのか、「上から目線の卑日」を続けるのか、あるいは新たな対日姿勢を開発するのか――。極めて興味深い点です。

――戒厳令を出しても韓国の民主主義のほうが「上」なのですか!

鈴置:韓国人独特の自画像と対日意識の急速な変化については『韓国消滅』第4章「日本との関係を悪化させたい」を是非、お読みください。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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