トランプショックを待たずに「暗いトンネル」突入の韓国経済 第1四半期マイナス成長が示す「縮む」時代の幕開け

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日本に遅れること24年

 韓国では潜在成長力が頭打ちになっていました。成長の原動力たる生産年齢人口(15―64歳)が2019年にピークを迎えたからです。世界で最も急速と言われる少子高齢化が原因です。

 日本の生産年齢人口のピークは1995年でした。韓国は日本に24年間遅れて構造的な衰退期に入ったのです。韓国の少子高齢化の原因と、それが引き起こす問題に関しては『韓国消滅』第1章「世界最悪の人口減少」に詳述してあります。

 潜在成長力が落ち込んでくると、ちょっとした景気の変動でマイナス成長に陥ります。今がまさにその時期です。昨年12月の戒厳令宣布で人々は財布のヒモを一気に締めました。

 2024年6月以降、100・0を超えていた消費者心理指数(全国)は同年12月、前月の100・7から急降下して91・2に。2025年に入っても1月=91・2、2月=95・2、3月=93・4と回復していません。

 長期的に見ても、韓国の小売売上高は2022年以降、前年割れが続いています。生産年齢人口の減少と共に韓国の消費も縮んできた。それに戒厳令という短期的な要因が追い打ちをかけたのです。

 第1四半期のGDPを項目別に見ても、民間消費はマイナス0・1%でした。なお、もっとも激しく落ち込んだのは建設投資のマイナス3・2%。マンション建設の中断が地方で相次いだためですが、これも人口の頭打ちが背景にあります。

韓国に過酷なトランプ関税

――トランプ関税の影響は?

鈴置:その影響はこれから――第2四半期以降に出てきます。自動車に追加関税25%がかかったのは4月3日ですし、相互関税10%の発動は4月5日でした。

 第1四半期に影響が出たのは、追加関税が3月12日から適用された鉄鋼・アルミぐらいです。東亜日報の「鉄鋼関税爆弾から1カ月、対米輸出17%急減」(4月18日、日本語版)によると、鉄鋼製品の1月の対米輸出は前年比16・6%減、アルミ製品は4・7%減だったそうです。

 なお、韓国の通関統計(速報)によると4月1-20日の対米輸出総額は前月同期比で14・3%減少し、全世界向けも5・2%減りました。

 韓国経済の今後に関してはIMF(国際通貨基金)も厳しい見方をしています。4月22日、「World Economic Outlook 2025 APR」(世界経済展望2025年4月版)を発表しました。

 IMFはこの段階で2025年1年間の韓国の成長率を1・0%と予想したのですが、1月段階の見通しの2・0%と比べ1・0%ポイントも下方に修正したのです。

 ハンギョレは「韓国に特に過酷な『トランプ関税ショック』…対米・対中輸出割合の高さで直撃」(4月23日、日本語版)で韓国の修正幅が調査対象の30カ国中4番目に大きかったと神経をとがらせました。

 その理由に関し、企画財政部のキム・ジェファン国際金融局長は「昨年12月の戒厳事態の及ぼした内需への衝撃などが反映されるとともに、韓国の貿易に占める対米・対中輸出の割合が高いことで受ける影響も反映された」と語っています。

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