なぜ格ゲーに…「餓狼伝説」にクリスティアーノ・ロナウド参戦 異例コラボの背景に“壮大な国家戦略”
すでに永井豪アニメがリブート
プロジェクトが実施されたコンテンツとしては「ミスク財団」の子会社であるマンガ・プロダクション社が出資し、中東でも人気の高い永井豪原作のアニメ「UFOロボ グレンダイザー」をリブートした2024年制作の「グレンダイザーU」がある。やはり2024年には人気漫画「ドラゴンボール」のテーマパークをサウジに建設する計画も発表された。
ゲームの分野でも、世界的なゲームスタジオの誘致や「eスポーツワールドカップ」を開催するなど投資を拡大していて、日本でもサウジアラビアの政府系ファンドが任天堂株の約8%を取得し主要株主の一角となってもいる。出資は、スクエア・エニックス、カプコンなどのゲーム会社にも及ぶ。
その一環がSNKの買収だった。サウジ企業に買収された後、SNKは「サムライスピリッツ」「ザ・キング・オブ・ファイターズ」などの人気タイトルの続編を次々制作。そして四半世紀ぶりに「餓狼伝説」の新作が発売されることとなった。
ロナウド意外にも実在の人物が…ファン賛否も、狙いは
さらに「ビジョン2030」にはスポーツ分野も含まれている。特に注力しているのがサッカーで、自国リーグである「サウジプロフェッショナルリーグ」を世界トップ10にする計画を進めており、既に欧州トップクラブのスターたちを法外な契約金で次々と移籍させている。
その目玉が、2023年にサウジアラビアのクラブ「アル・ナスル」へ移籍したロナウドだった。この移籍でロナウドは手取り年俸700億円を手に入れたと報じられている。そしてこのクラブの実質的オーナーがムハンマド皇太子だ。つまり「餓狼伝説」へのロナウドの参戦は、サウジの国家プロジェクトが産んだものといえる。
新作の「餓狼伝説」にはロナウド以外にも音楽DJのサルバトーレ・ガナッチもプレイアブルキャラクターとして登場している。このガナッチも、サウジの音楽フェスティバルで頻繁にパフォーマンスを披露するなど、同国に縁の深い人物だ。
オイルマネーによる日本ゲームの私物化とも取れる話だが、ゲーム関係者によればロナウド起用にはビジネス面でも意味があるという。
「古参のファンの間では『実在の人物がでたらゲームの世界観が壊れる』との声もありますが、そもそも『餓狼伝説』は四半世紀も新タイトルが出ていない。言うなれば一回死んでいるIPです。かつてのファンや既存の格闘ゲームファンを狙うのではなく、新たな層の開拓をしようとしているのでしょう。その点、6.5億人とインスタグラムでは世界一のフォロワー数を抱えるロナウドの起用のPR効果は大きいと思います」(ゲーム関係者)
ロナウド以外にも、夏にサウジで開催されるeスポーツワールドカップの種目の一つに「餓狼伝説」が入っており、賞金総額は100万ドル(約1億5,000万円)と破格だ。さらに4月19日、20日に開催されたアメリカのプロレス団体最大の祭典「レッスルマニア41」でも「餓狼伝説」は主力スポンサーとなり、リング中央に広告が入れられるなど資金力を活かし、世界規模でのプロモーションが行われている。
「餓狼伝説」では格闘家たちが最強を目指して戦うが、現実世界では拳よりもどうやら札束の方が強そうだ。




