「子どもの姓」を決めないと結婚できない? 「選択的夫婦別姓」立憲の法案が“憲法違反”と指摘される理由とは

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日弁連は「子をもうける前提で姓を決める制度」に強く反対

 立憲にとって気になるのは、これまで共同歩調をとってきた日弁連だろう。2024(令和6)年6月、日弁連は「誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議」と称する長いタイトルの決議を行なった。

 これによると、日弁連は「婚姻時に子どもの姓を決めること」に明確に反対している。決議の中では「別姓夫婦の子どもの姓の定め方」について次のように記している。

《1996年の法制審議会による法律案要綱では、子の姓を統一することとし、婚姻の際に夫又は妻の姓を子の姓として定めなければならないとしているが、子をもうけるかどうかはそれぞれの夫婦の生き方や選択によるものであり、子をもうけることを前提にあらかじめ子の姓を定めるような制度を採用すべきではない。(中略)別姓夫婦の子の姓の定め方については、子の出生の時点における状況や当該子の将来などを考慮して、夫婦の協議によって父又は母の姓をその都度選択すれば足り、それが子一人ひとりの福祉に資することになり、それぞれの家族の多様性を認めることにもつながる》

 こうした日弁連の主張は、現行の夫婦同姓制度を批判する論理から生まれている。前述の決議にはこう記されている。

《夫婦が同姓にならなければ婚姻できない、とすることは、憲法第13条の自己決定権として保障される「婚姻の自由」を不当に制限するものである》

《民法第750条は、婚姻に「両性の合意」以外の要件を不当に加重し、当事者の自律的な意思決定に不合理な制約を課すものである》

 この理窟からすれば、選択的夫婦別姓制度が導入された場合、「子どもの姓を決めなければ婚姻届けが受理されない」のも同じく《「両性の合意」以外の要件を不当に加重》することになるだろう。そう考えると、日弁連が立憲に合わせて方針を転換することは考えにくい。

 では、これまで立憲と共闘してきた共産党はどうか。昨年10月に更新した同党の公式ホームページでは、選択的夫婦別姓について《子どもの姓については、それぞれの子どもの出生時に定めることにし、子どもが18歳になった時点で本人の申し立てにより変更できるようにします》としている。変節を嫌う政党だから、立憲が子どもの姓の決め方を変えたからといって、そう簡単に変更するとは思えない。

椎谷哲夫(しいたに・てつお)
1955年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院社会科学研究科修士課程修了。日本記者クラブ会員。元中日新聞社(中日新聞・東京新聞)編集委員。警視庁、宮内庁、警察庁など担当。著書に『皇室入門』(幻冬舎新書)、『夫婦別姓に隠された“不都合な真実”』(明成社)など。

デイリー新潮編集部

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