ウクライナで拘束の「中国人兵」が衝撃の暴露…敵軍の居場所を割り出せれば「外国人兵が戦死しても構わない」というロシア軍のヤバすぎる本音
傭兵としてロシア軍に加わった日々は、文字通りの地獄だった──。4月14日、ウクライナ軍に捉えられた2人の中国人捕虜が首都キーウで記者会見を開いた。顔を隠さず、自分たちのパスポートも公開したため、一部の海外メディアは実名報道に踏み切った。彼らが個人情報を明かしたのは「とにかく帰国したい」という意外な理由だった。(全2回の第1回)
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【写真】ロシア軍での“非人道的な仕打ち”の数々を告白した「中国人捕虜」…必死の表情で中国への帰国を懇願していた
2人は依然としてロシア軍の傭兵だ。そのため下手に捕虜交換の対象に選ばれると、血も涙もないロシア軍の元に戻らなければならない。それだけは絶対に嫌だ──。そう考えた彼らは会見で自分たちのプライバシーを明かすという“奇策”に打って出た。
中国政府に無断で戦闘に参加した2人は、中国の法律で罰せられる可能性がある。会見を開けば中国政府は収監の必要がある自国民がウクライナにいると把握するだろう。その結果、彼らの身柄引き渡しをウクライナ政府に求めるに違いない──この可能性に2人は賭けた。
人道的な戦争など存在しない。とは言え、2人の捕虜にとっては「外国人傭兵に対するロシア軍の“非人道的”な扱いに比べれば、母国の刑務所のほうがマシ」が本音だろう。
実際、彼らの会見で明らかになったロシア軍の“外国人傭兵を利用した突撃戦法”は、「ロシア兵の身代わりとして傭兵には死んでもらう」という、にわかには信じられないものだった。
2人が暴露した“ロシア軍残酷物語”の詳細を、地元メディアであるキーウ・インディペンデント紙とウクルインフォルム通信が配信した記事を元にお伝えしよう。
始まりはTikTokの広告動画
中国人捕虜の一人目は1991年に生まれた34歳の男性。もともとはリハビリ療法に従事する医療関係者だったという。
両親は健在で、結婚して子供もいる。男性は会見で「比較的、円満な家庭だと言えるでしょう」と説明した。ところが中国国内で感染症が拡大したことが原因で、昨年の夏に失業してしまった。
失業者として職を探す日々。ふとTikTokを見ると、ロシア軍への入隊を呼びかける広告が目に飛び込み、興味を持った。男性によると中国で軍役は名誉とされ、軍人の社会的地位は非常に高いという。さらに男性は「ロシア軍は負傷した兵士にリハビリを行う」という宣伝動画を見たこともあった。
男性は中国社会で軍人にはなれなかった。だがロシア軍は兵士を募集している。この事実を知り、男性の心は揺さぶられた。採用担当者に連絡すると、新兵には月給として20万ルーブルから30万ルーブルが支払われると説明した。
日本円では約34万円から約43万円となる。男性が所属する社会階層だと、中国では17万円から22万円ぐらいが月給の相場だった。男性は軍役の名誉だけでなく、高収入も魅力を感じた。担当者は「ロシアへの旅費は負担するし、必要な書類もこちらで準備する」と勧誘した。
今年2月、ついに男性はモスクワへ渡った。中国当局から「就労目的でロシアに入国してはならない」と警告されたが、無視することにした。
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