元オウム最高幹部が語る、ホームレス支援の「大家業」に人生を捧げる理由 「家賃が回収できず、ゴミ屋敷にされることも」

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「たいがいがゴミ屋敷になるし、孤独死の処理は10人以上」

「生活保護の申請を手伝っても、店子の多くは半年もしない内にプイッとどこかに行ってしまうんです。そのたびに家賃は回収できず、片付けも修繕も全部私がやるんですからね。たいがいはゴミ屋敷になっていますし、孤独死の処理だって10人は経験しています」

 さすがに遺体こそ警察が引き取るが、死臭が充満する部屋の始末は野田氏自らが行うという。

「片付けだけじゃなく、近頃は手伝ってもらいながらでも、ほぼDIYで新築アパートを建てることもあります。そうすると半分とか3分の1ぐらいの資金でできるんです」

 事業の内容を語るその表情は、まさに経営者のそれだが、もとより店子は社会になじめない人々が多数を占めるため、思いもよらない“事件”もしばしば起こる。

「末尾が“0110”の電話番号、つまりは警察からの電話もよくかかってきますね。昔は捕まる側でしたが、今は捕まえる側の協力者です」

若い入居者が増加

 自嘲気味に語る店子の犯罪の多くは窃盗や食い逃げだというが、一昨年にはこんなことがあった。

「派遣切りで寮を追い出された20代の男が彼女と一緒に助けを求めてきました。茨城まで迎えに行き、こちらで生活保護を受けさせたのですが、使い込んじゃったみたいで最後は闇バイト。質屋強盗の運転手をやって捕まってしまった。彼女も逃げちゃって家賃は未納のまま。いまさら彼らに請求のしようもありません」

 生活保護といえば、高齢のホームレスをイメージしがちだが、このように最近は若い人も増えている。

「店子の約半分が40~50代で、それより若いのが4分の1、年上が4分の1ぐらいですかね。施設を追い出された10代の若者だっています。仕事のできない高齢者なら役所から家賃が振り込まれるので取りっぱぐれはないですが、多少なりとも収入があると、こちらが回収しなければならない。これが大変なんです」

 後編【「生活保護を300万円不正受給」「ゴミ屋敷を残して夜逃げ」 ホームレス支援をするオウム元最高幹部が忘れらない「クソ姉妹」】では、問題行動も多い入居者たちの中で、今も野田氏が忘れらないという「クソ姉妹」について話を聞く。

週刊新潮 2025年4月17日号掲載

特集「麻原彰晃逮捕から30年 300人の“大家さん”になった元オウム最高幹部(58)の告白」より

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