「ゲーム機やテレビまで裏金で…」 川崎重工の裏金17億円問題 潜水艦乗組員を40年間「接待漬け」にしていた実態

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 日付とともに〈16名 川重様〉と書かれた伝票に、盛大に注文されたメニューと正の字が並んでいる。

 バーボン10杯に生ビール12杯、チューハイが9杯で、うどんが2、やきめし2。赤霧島はボトルで2本、いいちこは3本。そしてオードブル×4などなど。〆て9万2300円也。

 お代を人数で割ると1人あたま5770円弱になる。が、その場にいた者は誰も支払っていない――。

 昨年来、海上自衛隊の潜水艦修理に絡み、製造元の川崎重工業が乗組員に物品や飲食代を提供していた問題が大きく報じられてきた。

「不正の温床は……」

 社会部記者が振り返る。

「不正の温床は、潜水艦の修理や検査を行う川重神戸工場の修繕部でした。問題が明るみに出たのは昨年7月。大阪国税局の税務調査で、川重が下請け企業との架空取引で裏金を捻出していたことが分かったのです」

 先の伝票は、川重と乗組員の酒席で川重側がサインをし、“ツケ払い”で下請け企業に回したものである。

「裏金は2023年度までの6年間で17億円にも上りました。川重は下請け企業への架空発注分も経費に含めて税務申告したものの、国税局は裏金の使途のうち約13億円分が経費と認められない交際費と判断。悪質な所得隠しと認定しました」

 結果として、川重は今月10日、約6億円の追加納税を発表。税務調査の終結とした。果たしてこれで幕引きとなるのだろうか。

営業努力の必要なし

 そうは問屋が卸さないのでは、と防衛省の元幹部。

「裏金づくりは40年前、1985年ごろから連綿と続けられていました。しかし潜水艦事業は秘密だらけで自衛隊員でも近づきがたく、その閉鎖性ゆえ公然の秘密のままでした。長年、架空取引で年間2億円程度の裏金を作り乗組員を“接待漬け”にしていたのに、私も昨年の問題発覚まで実態を知りませんでしたから」

 そもそも、国内で潜水艦の建造と修理を請け負えるのは川重と三菱重工業のみ。海自所有の潜水艦25隻は川重製と三菱重工製がおよそ半々とされる。

「国産技術保護のため、防衛省は隔年で両社から交互に調達するので、川重があえて営業努力をする必要はありません。修理は、3年間隔で9カ月程度の期間を費やす定期検査と、そのあいだの年に2~3カ月かけて行う年次検査がある。乗組員は社員と連携して艦内の整備にあたります」

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