「世間知らずのボンボン」ゆえの失敗なのか… パワハラ報道の青井実アナに見る「勘違い」
夕方のニュース番組「Live News イット!」のメインキャスター・青井実氏が起こしたパワハラ問題。ライターの冨士海ネコ氏は、問題の背景に「世間知らずのボンボン」ゆえの勘違いがあるのではないかと分析する。
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「Live News イット!」(フジテレビ系)のメインキャスター・青井実氏がパワハラ報道で謝罪。謝らなければいけないほどのパワハラを、フリーの立場の人間が契約先の社員に振るうというのもかなり珍しい。しかし青井アナという人を見れば、さもありなんとうなずく人もそれなりにいるだろう。
祖父は丸井の創業者、幼稚舎から慶應、妻はキー局の女子アナ、高身長で爽やかなルックス。そりゃあ、調子に乗ってもおかしくない。NHK在籍時代も、大阪支局の後すぐに東京アナウンス室に異動。支局を転々とするのが通例とされるNHK文化の中で、「えこひいき人事」だったのではと疑いの目を向けられた。
また、青井アナのスキャンダルはこれが初めてではない。NHK退社直前には親族企業から役員報酬を受け取っていたことが発覚し、社内規定違反だと厳重注意を受けている。しかし当時担当していた「ニュースウオッチ9」では釈明せず、いつの間にか消えてフジの帯番組の顔に、という退社劇は物議を醸した。
前回と今回、二つのスキャンダルから受ける印象は「人に厳しく、自分に甘い」である。そしてそれはまた、彼の「お坊ちゃん」ゆえの性格なのだと結び付けられやすい。事実、ネットニュースのコメントでは、「今までチヤホヤされてきたから社会や周囲をナメている」というニュアンスの書き込みが見られた。
おそらく青井アナは幼い頃から、そうした視線にさらされてきたことだろう。温室育ちのチャラい坊ちゃんというイメージから脱し、誠実で実直なMCとして見てもらいたい、という思いが今回のパワハラにつながったのだとしたら、少し同情する部分もある。けれども、やっぱりそれもまた独りよがりで、世間知らずなお坊ちゃんゆえの視点だなと思ってしまう。学ぶべき「失敗例」は、周囲にすでにあったからである。
安藤優子に櫻井翔 「上から目線」で炎上したキャスターたちという他山の石
フリーアナによる社員へのパワハラ、で思い出すのは、安藤優子キャスターによる「炎天下リポート中継強行事件」である。2020年の夏、40度近い炎天下にいるディレクターのリポートがおぼつかなくなるのを見て鼻で笑い、スタジオに一度返されても拒否してリポートを続行させようとしたやり取りは炎上した。共演しているタレントが「休憩した方が」と中断を呼びかけたが、安藤キャスターは心配するそぶりもなかった。画面の前に立ったら何があろうとリポートを続けるべきであり、不測の事態が起きても平然としているべき。仕事に差し障りがないように体調管理をしていて当たり前。安藤キャスターはそうした矜持(きょうじ)によって、今の地位まで昇り詰めたという自負もあったに違いない。だから若いディレクターに対しても、休憩ではなく、プロとして仕事を全うすることを求めたのだろう。
青井アナの行動についても、元同僚である神田愛花アナは「ぽかぽか」にて擁護していた。いわく、NHKでは構成や演出について自分の意見をはっきり編集にも言うのが当たり前だという。ただ、よりよい番組を作りたいという思いが、若手社員に対しては強い圧として受け止められてしまうという安藤キャスターの一件を、青井アナが知らなかったとしたら勉強不足だと言わざるを得ないし、イヤホンを放り投げるようないら立ちぶりを見せたという報道が本当ならば、それは意思表示の範囲を超えている。この青井アナと背景が似ているキャスターといえば、「news zero」(日本テレビ系)の櫻井翔さんが思い浮かぶ。幼稚舎から慶應、親は官僚、交際相手は女子アナやミス慶應と、とても良く似ている。だからだろうか、櫻井さんの進行に向けられる批判は、青井アナに向けられる批判と重なる。「軽い」である。
それらしいことを、それらしい神妙な顔で言うものの、どうも血が通ったコメントには聞こえない。伝わってくるのは、エリート教育の中で育まれたであろう、正解らしき行動をすぐに導き出すことのできる頭の良さと要領の良さだ。
番組の顔として、責任を持って滞りなく進行したい。そしてMCとしての存在感を示したい。安藤キャスターからも櫻井さんからも青井アナからも、優秀な人ならではの自信と野心が感じられる。それは悪いことではない。でも問題は、青井アナたちがたとえそう思っていなくとも、一般市民である視聴者やスタッフからすれば、恵まれた人たちによる「上から目線」の理想論や空虚なコメントに聞こえてしまうということではないだろうか。
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