ブスいじり、セクハラが当たり前だった平成期の音楽番組たち 松本人志、中居正広、石橋貴明…当時のMCが相次いで告発された因果
芸能人の私生活にも「お利口さ」は必要か? テレビの力が落ちて変わってきた視聴者の受け止め方
第三者委員会の報告前に、食道がん治療のため芸能活動休止を発表したタカさん。セクハラ事案に関しては、「10年余り前のことで記憶が曖昧な部分もありますが」としながらも、謝罪コメントを発表した。
正直、当時のバラエティー番組ファンとしてはとても寂しいのである。私も当時はゲラゲラ笑って見ていた一人であり、野猿の「First impression」は今でも聴く。「ねるとん」だって、一喜一憂しながら見ていた。女性に対する態度の差はモヤモヤしたことはあったものの、「美人でなければ不利益を被るのは仕方ない」とあきらめていた。下手に文句を言えば、「ブスはこれだから」、とバカにされるような気がして。
それはわたしが、あるいはわたしのような視聴者の多くが、タレントやテレビ局を一方的に批判できるほどハラスメント意識が高かったわけではないということである。その一方で、芸能人にお利口さを求めていたというのは今考えるとおかしい。テレビ局やタレントのアップデートだけでなく、視聴者側にも変化が求められているのではないだろうか。
芸能人の技能や美貌と人間性は別、と割り切れるかどうか。今もなお、舞台あいさつや番宣でぶっきらぼうな受け答えをするタレントは物議を醸す。無愛想なのはいいが、不倫はダメ。不倫は夫婦の問題だが、薬物や暴力はダメ。いや、芸能人は全方位に品行方正でないとダメ――線引きは人によってまちまちだ。
MCへの対応力が問われるバラエティー番組は減り、テレビよりSNSやラジオを「素の自分」を見せる場所と位置付け、スキャンダルがあっても記者会見は行わないという芸能人は増えている。それはMCに気に入られるかどうかを絶対の基準として世間に定着させてきたテレビの力が落ちてきた故の現象ともいえるだろう。
「大どんでん返し」が必要なのは、フジだけでもタカさんだけでもない。あの頃のテレビっ子として、ちょっと反省している。
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