1軍復帰「村上宗隆」に“外野コンバート”論が強烈に高まる理由 代役三塁手は絶好調 MLB移籍にも好影響か
2年連続5位から、3年ぶりのペナント奪還を目指すヤクルト。巨人との開幕戦は、5-0からよもやの大逆転負けを喫する最悪のスタートを切ると、開幕シリーズで3タテを食らってしまった。しかし、その後はなんとか持ち直し、勝率5割前後を維持している。
ただ投手陣の奮闘が目立っている一方で、自慢の打線がやや低調なのが気掛かりだ。昨季セ・リーグ最多安打をマークした長岡秀樹や両外国人(サンタナ、オスナ)らの復調が待たれる状況だが、やはりカンフル剤となるのは、あの男の復帰しかない。
【八木遊/スポーツライター】
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17日に一軍合流
燕打線の救世主として期待されるのが、“上半身のコンディション不良”で出遅れていた主砲・村上宗隆である。
村上といえば、2022年に22歳の若さで三冠王に輝き、21年と24年にも本塁打王を獲得した現役屈指の長距離砲。高卒2年目の2019年からはほぼ全試合に出場するタフな選手でもあり、ここ数年はチームだけでなく球界の顔として存在感を示してきた。
ところがオープン戦さなかの先月9日、広島戦に出場したのを最後に戦線離脱。約1か月にわたって二軍で調整する日々を送っていた。
村上が実戦復帰を果たしたのは今月8日。イースタン・リーグの西武戦に先発出場し、2打席目にいきなり安打を放つと、12日のオイシックス戦では待望の一発も飛び出し、17日の阪神戦で一軍に合流した。
そんな村上がプロ入り8年目にして新たな挑戦をしている。それが外野の守備だ。二軍戦に復帰後しばらくは定位置の三塁を守っていたが、ここ数試合は右翼を守り、ファインプレーも見せていたようだ。
不慣れな外野守備にはファンから否定的な声も
実は今年2月に、高津臣吾監督が「チームのことを思うと、これ(村上の外野挑戦)も一つの選択肢かなと」と「デイリースポーツ」の取材に答えていた。「来年、外野の準備もしておいてくれという話をしました」と、前年の時点で村上本人に外野の守備を練習するよう要請していたことも明かしている。
ただ、外野を守らせていることに対しては、「故障明けの選手に不慣れなポジションを守らせるのか」とったファンの否定的な意見が上がっているのも事実。それでも、チーム事情を鑑みれば、村上の外野挑戦はチームにとって最適解といえるかもしれない。
というのも、村上の離脱後、三塁には楽天から今季新たに加わったプロ10年目の茂木栄五郎が入っているのだが、攻守にわたってチームに欠かせない存在となっている。打撃面では、チームトップの打率.286をマーク。特に得点圏では6打数3安打(打率.500)と抜群の勝負強さを見せつけているのだ。昨季まで通算746安打、打率.271をマークしている。
さらに開幕から三塁手として11試合に出場し、いまだ無失策。堅実な守備で投手陣を救ったのは一度や二度ではない。楽天時代は遊撃手として守備範囲の広さに定評があり、昨季は本職ではない一塁と二塁もそつなくこなしていた。
そんな茂木とは対照的なのが村上だ。プロ入り当初から守備に難があり、特にスローイングに大きな課題を抱えているとされている。実際、三塁に定着した2021年から毎年、失策数は二桁を記録。高津監督としても茂木が加入した時点で、外野に村上を配置する構想を抱いていてもおかしくないだろう。
不振に陥っている打者が多い現状のヤクルト打線において、打撃好調の茂木をスタメンから外す選択肢は考え難い。村上が不慣れな外野でプレーする“リスク”はもちろんあるが、この“コンバート”はむしろ本人とすれば好都合となるかもしれない。
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