「僕は忘れられたゴルファーだった」 マスターズ惜敗でも“最高にイイ奴”だった「ジャスティン・ローズ」は復活した元天才少年
真っ先に歩み寄ったローズ
シーズン最初のゴルフのメジャー大会、マスターズの優勝争いは、北アイルランド出身のローリー・マキロイ(35)と英国出身のジャスティン・ローズ(44)のサドンデス・プレーオフにもつれ込み、1ホール目の18番で1メートルのバーディーパットを沈めたマキロイの勝利で幕を閉じた。
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2011年マスターズ最終日に勝利ににじり寄りながら後半で大崩れして以来、マスターズ制覇は、マキロイの悲願だった。そして、他の3つのメジャー・タイトルをすでに手に入れていた彼にとってマスターズでの勝利は、メジャー4大会すべてを制覇するキャリアグランドスラムの達成を意味していた。
1メートルのファイナルパットを沈め、勝利を決めた瞬間、マキロイはグリーン面にひれ伏すようにうずくまり、顔を紅潮させながら、勝利の喜びと達成感を噛み締めた。
そのとき、真っ先にマキロイに歩み寄っていったのは、ともにプレーオフを戦ったローズだった。
落胆も悔しさも表に出さずマキロイを祝福
最終日のローズはマキロイから7打差でスタートしたが、6つスコアを伸ばして通算11アンダーで先にホールアウト。72ホール目でボギーを喫したマキロイとのプレーオフを戦ったが、1ホール目は3メートルのバーディーパットを決められず、パー止まり。
直後にマキロイが沈めたバーディーパットは、マキロイの悲願達成の瞬間だったが、ローズの敗北が決まった瞬間でもあった。
しかし、ローズは落胆も悔しさも表には出さず、すぐさまマキロイに近寄っていった。マキロイを包み込むように抱きしめた優しいハグは、形だけのハグではなく、心からの祝福だったことは、誰の目にもわかった。
だからこそ、そんなローズの姿に感じさせられたものが、多々あった。
マキロイは2011年の惨敗以来、14年越しでマスターズ制覇の悲願が叶った。キャリアグランドスラムでは、チャンスに付けた2014年以来、11年越しでの達成だ。だが、マキロイに敗れたローズの悲願は、いつか叶うのだろうかと、ふと思った。
「さすがは天才少年」と絶賛されたが…
ローズにとってもマスターズ優勝は悲願だ。2017年大会では、スペイン出身のセルジオ・ガルシアとのプレーオフに敗れ、今年はマキロイとのプレーオフで再び敗北した。
44歳という年齢を考えれば、もしかしたら今年は、実質的にはラストチャンスだったのかもしれない。しかし、それでもなお、真っ先にマキロイを讃えたローズの姿には、「グッドルーザー」の一言では言い尽くせない大きさと深み、そして温かみが感じられた。
ローズは南アフリカ生まれだが、5歳から英国で育った英国人選手だ。PGAツアーでは、2013年の全米オープン優勝を含め通算11勝。彼のキャリアの始まりは、実にセンセーショナルだった。
17歳のアマチュアとして出場した1998年全英オープンで、いきなり4位タイに食い込み、世界を驚かせたローズは、その直後に、その勢いのままプロ転向し、世界をさらに驚かせた。
「さすがは天才少年」「決断もアクションも早い」と絶賛され、当時は大きな話題になった。しかし、期待や予想とは裏腹に、その後は21試合連続予選落ちを喫し、「天才少年」の話題は、いつしか消えていった。
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