えっ!ゴリラじゃなかったの? 「ごり押し」の“ごり”の意外な正体…「とどのつまり」の“とど”は日本三大珍味で知られる“出世魚”だった
語源は「ゴリ押し漁」
このゴリという魚は、かつて西日本で良く獲れていた小魚で、主に佃煮にして食べられていた。ハゼのような見た目のカジカ科魚で、川底にへばり付いて生息している。そのため、ゴリを獲るための漁は、川底を削るように力を込めて行う「ゴリ押し漁」と呼ばれる。これがごり押しの語源となったという。
大きな石を“五里押し続けた”ことを起源に挙げられるケースもあるようだが、ゴリ漁の方に信憑性がありそうだ。ちなみに今、豊洲市場でごりの扱いはほとんどないというから、ごり押しの由来も忘れられつつある。
ほかにも魚にまつわる慣用句は多く、「水を得た魚(うお)」、「腐ってもタイ」、「引っ張りダコ」など、だれでも3つくらいはすぐに言えるのではないか。「サバを読む」など、いきなり魚の名前から始まる慣用句もあるが、この言葉も由来は必ずしも浸透していない。
今は年齢に関して「サバを読む」が使われることがあるが、この場合は実年齢よりも若く(数を少なく)言うことが多い。一方、「サバを読む」の由来については、サバは足が速い(腐りやすい)ため、売りさばくのに数を適当に数えて急いで売っていたため、だという。この場合には、魚商が儲けようと考え、実際の数よりも多く言っていたのかもしれない。
「とどのつまり」の“トド”は意外な魚
さらに、人気漫画「カイジ」の決めセリフ「とどのつまり」のトドはどうだろうか。昨年夏、有名タレントがオリンピックの金メダリストを「トドみたい」と発言し、非難されたことがあったが、もちろんそのトドではない。
この場合のトドとは、出世魚である「ボラ」の魚名を指す。「オボコ」→「スバシリ」→「イナ」→「ボラ」と来て、さらに成長したのが「トド」。体長50センチ以上の大型魚をそう呼ぶのだそう。ちなみに、ボラの卵巣を塩漬けにし、乾燥させたのが珍味で知られる“からすみ”だ。とはいえ、ボラそのものはそれほどメジャーな魚ではない半面、哺乳類のトドが巨体で、水族館などで馴染みある人気の動物だから、なかには勘違いする人もいるのであろう。
最後にもうひとつ。「あごあし付き」のあごとは、何だかおわかりだろうか。筆者からの質問だけに「魚のアゴか!?」と思った方もいるのではないか。残念ながらこのあごは顎のこと。食べるときに顎を使うため、食事(代)を意味しているという。
と、こんな話をまとめていると、自分が“ごりごりの魚記者”になってしまった気がしてならない。




