「反省せずに解散命令を逃れようとしている」 旧統一教会内部で何が起きているのか 「信者の引き抜きも」
世の中では当然のことを、さすがは“異形の集団”、そうとは受け止めないようだ……。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散命令が下された。だが、教団側は徹底抗戦の姿勢を見せている。果たして、彼らは何を頼みに「反撃」に出ようとしているのだろうか。【窪田順生/ノンフィクション・ライター】
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「日本国民の大勝利」
「やったぜ☆」
「朗報、カルトは潰すべし」
3月25日、日本政府による旧統一教会への解散命令請求を東京地方裁判所が認めたことを受け、ネットやSNSでは即座に拍手喝采が沸き起こり、この決定を支持する声が多く上がった。
衝撃的な安倍晋三元首相銃撃事件を機に、高額献金などの問題が注目を集めたことで、世間の教団に対するアレルギー反応は強まるばかりだった。しかも、解散命令が出される5日前の3月20日は、地下鉄サリン事件から30年の節目ということで、マスコミ各社は「オウム真理教」を特集。教祖・麻原彰晃に「洗脳」された信者たちが起こした非道な事件を振り返った。この流れで、「洗脳」が問題視される教団に解散が命じられればネット上で「祭り」が盛り上がるのも当然であろう。
旧統一教会が徹底抗戦する理由
しかし、そんな世間の反応をよそに、旧統一教会側は徹底抗戦の構えを見せている。東京地裁の決定後に開いた記者会見で田中富広会長は解散命令を批判し、「命令は明らかに不当。最後まで闘う」と主張、抗告して高裁で争うことを明言した。「往生際が悪い連中だ」「政府に歯向かっても無駄なのに」とあきれる方も多いだろう。以下は、世の中から見れば「すでに敗れし者」の足掻きの記録である。
まず、信者たちが必死に抗っている背景の一つには、解散命令が確定すると、これまでのような税の優遇が受けられなくなるだけではなく、裁判所が選定した清算人の下財産が処分されることがある。つまり、ニュースや情報番組で幾度となく中継された東京・渋谷の教団本部や、全国にある教会施設なども手放さなくてはいけなくなる可能性が出てくるのだ。
それはつまり、信者たちにとって最も重要な礼拝や集会をする場が奪われてしまうことを意味する。彼らは個人宅などでひっそりと集まり「隠れキリシタン」のように人目を忍んで活動しなくてはいけなくなる。古参信者は不安を口にする。
「信者には高齢の人も多いので、解散にショックを受けてそのまま心身を壊してしまう人もいるのではないでしょうか。そういう高齢信者の心の弱みにつけ込んだ詐欺が増えるのではないかと心配です」
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