テレビもネットニュースも「大谷翔平依存」が過ぎないか? 安直な“関連ニュース”増産の背景にメディアの苦境

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大谷大学でも……

 1本目の記事は、「大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・ドジャースは」に始まり、ブレイク・スネル投手が負傷者リスト入りとなったことを紹介。2本目も同じ書き出しで、カルロス・デュラン投手をトレードしたことになっている。いずれも使用する写真は大谷のものである。

 本文中に「大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・ドジャースは」と一言でもいれておけば、記事のタイトルを支える根拠はできている。しかし、蓋を開けてみればスネルとデュランの記事であるわけで、このタイトルと写真はグレーではなかろうか。

 この件についてはYahoo!ニュースのコメント欄でも「いちいち大谷翔平所属のドジャースなんて書く必要無い」というコメントが書かれている。まともである。だが、これがまかり通っているわけだから、こんな見出しすら成立するようになる。

〈大谷翔平出身の岩手県で地震発生 東日本大震災の再来を心配する声〉
〈大谷翔平と同じ身長193cmの男性、川で溺れた少年を助け表彰される〉
〈大谷翔平が飼う愛犬・デコピンと同じ犬種の「コーイケルホンディエ」 飼うポイントは?〉
〈大谷翔平が国籍を持つ日本、首相の石破茂氏の弱腰外交に批判の声〉

 メディアの人間は、いかにキャッチーな見出し・タイトル・キーワードを混ぜ込めば視聴率・部数・インプレッションが稼げるかを熟知している。このままいけば、大谷大学や大谷義夫医師に関する内容であってもなんでもかんでも記事にする未来もあるかもしれない。

メディアが苦境に陥っていることの表れ

 もっというと、大谷という名前の人物が逮捕された時に「大谷逮捕 スーパーでペットボトルのお茶とおにぎりを万引き」という見出しさえ成立する妙な時代になっているのである。さらに、こんな企画ですら成り立つ。

〈大谷さん5人に聞きました 大谷翔平の活躍以降、周囲の扱いは変わりましたか?〉
〈大谷 お笑いの原点に立ち返ると宣言〉※お笑いコンビ・ダイノジの大谷ノブ彦のこと

 全国各地に「大谷」とつく地名はあるわけで、「奈良県の大谷、イケメン輩出との噂を探ってみた」すらできる。この状況は突き詰めればメディアが苦境に陥っていることの表れといえよう。現に私もこのように大谷関連の原稿を書いているのだから。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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