犬猫が子どもより多い時代…新幹線、脳活サプリ、空間除菌まで 進化する「ペット市場」の商機と課題

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犬の頭数は減っているが支出額は増加 ホンダなど大手もペットビジネスへ

 猫の飼育頭数は微増を続けていて、2023年時点で915万5千頭。対して犬は679万6千頭と、10年前と比較して22%も減少しているという(冒頭で触れたペットフード協会の調査より)。しかし頭数は減っているが、市場は伸長している。2024年のアニコム損害保険の調査によると、一頭あたりの年間の支出額は41万4,159円と、前年比で122.3%も増加している。ちなみに猫は約17万8,418円で、前年比105.4%だった。

 この要因としてはまず、先に触れた「食」の高付加価値が第一の理由だろう。それに加え、「整体」や「供養」など、人間さながらのカテゴリーへサービスが拡大していることの影響も大きそうだ。

 大手メーカーも拡大するペット市場を狙っている。ホンダが昨年6月に発売したミニバン「FREED CROSSTAR」は荷室の床の高さを約33.5cmに設計し、乗り降りしやすい「ペットフレンドリー」であることを売りにしている。 今回の展示会では、座席用のサークルなど、愛犬用アクセサリー「Honda Dog」も紹介されていた。自動車ではほかに「揺れづらいので犬や猫も酔いづらい」というコンセプトで、スバルが自車をアピールしていた。

 家電の分野では、パナソニックが空間除菌脱臭機「ジアイーノ」を、ペットの室内飼いの観点から訴求している。公式ホームページを覗くと「動物病院の先生たちもおすすめ」という文字が真っ先に飛び込んでくるから、あらかじめペットを飼っている消費者を想定した商品なのだろう。犬猫専門のメーカーでなくても商機に乗ることができるこれらの例からは、ペットニーズに対応する商品が今後も増えていくことを予感させる。

マラソンに新幹線、「コト」消費も

 展示会では、多種多様な「モノ」が紹介されていたが、「コト」消費も徐々に増えている。たとえば、犬と一緒に走るドックマラソンが、4月20日には東京・葛飾区の水元公園で、同27日には千葉の九十九里ビーチでそれぞれ開催される。

 JR東海では、東海道新幹線開業65周年目にして、ケージなしで犬を新幹線に乗せる試みを行った。3月9日に試験運行した特別車両「わんわんエクスプレス」である。筆者もさくらと参加させてもらったが、車内の犬たちはみんな大人しくしていた(オムツをしているため排泄の心配もない)。大音量でスマホ動画を視聴するような乗客より、よほどマナーが良い。

 先に紹介した「ジアイーノ」も、車内に計4台設置。臭気を測定していたパナソニックの担当者に話を伺うと、数値的に大きな変化は見られないとのことだった。ただし犬には毛が抜ける問題がある。特別車両から一般車両に仕様を戻す際、毛の処理の問題は課題になるかもしれない。

 とはいえこれはビジネスチャンスだ。現在、東海道新幹線では、ペットをケージに入れれば「手回り品」となり、料金は290円。もし今後ケージから出しての「特別車両」が定着すれば、人間と同等、あるいは人間より高い料金設定ができるかもしれない。試験運行に参加した飼い主、そして犬の“笑顔”を見ると、充分ニーズはありそうだ。たとえば月1回のドックデーを設け、レンタカー、ペットOKの宿などと連動し、パッケージ化してしまうのはどうだろうか。

 今年の参議院選では、タレントのデヴィ夫人が犬や猫の愛護を主要な目的とする政党「12(ワンニャン)平和党」を立ち上げることが明かされ、話題を呼んだ。ペットフレンドリーの機運が高まっているこの状況は愛犬家としても嬉しいことだが、これからは今まで以上に動物が好きでない人に配慮した共存も重要になってくると考える。飼っている人、飼っていない人、なによりペット自身が喜び、快適なサービスだろうか?という視点は、ますます大事になってくるだろう。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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