「河野太郎」インタビュー トランプ時代の安全保障は「脱・日米同盟偏重」「NATOのインド太平洋への拡大を」

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介護、医療費抑制なら保険料下げ

 ――社会保障には年金のほか公的医療保険もある。

 公的医療保険制度も考え方は同じ。金融資産には資産割りを導入し、現役世代の保険料負担を軽減する。現在、国民健康保険料に資産割りを入れている地方自治体は全体の1~2割で、しかも金融資産ではなくすべて固定資産税が対象だ。嫌だという声は十分承知しているが、マイナンバーによる収入や資産の把握により、公正で公平に負担していただきたい。

 現在、公的医療保険は健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者医療制度と分かれている。今後は地域ごとに健康づくりを行い、医療費が減れば保険料も下がる仕組みが必要だ。医療保険と介護保険を連動させねばならない。

 例えば、認知症発症をできるだけ抑えたり、しっかり高齢者の見守り支援をしたりして、医療や介護の支出が減れば、当然に保険料も安くする。医療、介護費の抑制で、例えば、インフルエンザ予防接種をするほうがトータルで医療費が下がるならば、インフルエンザの予防接種を無償化したほうがよいという判断を保険者がするだろう。

 また、議論は割れるかもしれないが、亡くなられた方に腎臓を提供していただければ、人工透析している人に移植できる。そうすると1日おきの人工透析は不要となり、仕事をして税金を納めていただけるかもしれない。まずは、生きている人のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)にマイナスの影響をなるべく与えずに、医療費を下げる取り組みが必要だ。無駄な医療がないかどうか厳しく見ることが求められる。

日米同盟の「一本足打法」から集団安全保障へ

 ――外交、安全保障については。

 米トランプ政権を見ていると、日本の安全保障は日米同盟があるから十分だとは、とても言えない。実はオバマ大統領の時代に、中国による南シナ海の埋め立てに対し、米国は特に何もしなかった。東アジアへの関与は既に薄れつつあったわけだ。ポスト・トランプでも、例えば共和党にはバンス副大統領がおられるなど、アジアへのコミットメント回避は続くかもしれない。日米安保だけの「一本足打法」で不十分なのは明らかだ。

 よって、北大西洋条約機構(NATO)のインド太平洋への拡大を考える必要がある。中国が仮想敵国になりがちな「アジア版NATO」創設ではなく、法の支配や民主主義、基本的人権といった共通の価値観を持つNATOそのものをアジアに広げてもらい、日本や韓国、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなどが加盟する。お互いに助け合う集団的安全保障、集団的自衛権の枠組みを確立すべきだ。北朝鮮の兵士がロシア側についてウクライナであれだけ戦い、中国も裏でロシアを支えていると言われる。ヨーロッパとアジアが一体化しているのは明らかだ。

 ――今や自国だけで防衛できる国はない。憲法9条を改正し、共通の価値観を守るためにも、日本は「応分の負担と責任を果たす」と堂々と言える国でなければならない。だからこそ、東アジア危機が起きた時に域外から支援してもらえる。ウクライナ危機にも、本当なら日本はもっと踏み込んで対応できればよかった。

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