「そこまで言って大丈夫なの?」と担当編集もヒヤヒヤ…「堂本光一」が気概あふれる雑誌コラムで「タイプロ」と「ジュニア」について語る理由

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「日経エンタテインメント!」誌面で連載中のKinKi Kids堂本光一のコラム「エンタテイナーの条件」。その約9年分のコラムを再編集した『エンタテイナーの条件2』『エンタテイナーの条件3』(日経BP)が2巻同時刊行され、話題を集めている。同書は、16年に書籍化した『エンタテイナーの条件』の続編だ。日本記録を作ったミュージカル「SHOCK」シリーズの演出ノウハウから、事務所問題に揺れた当時の心境まで――、“エンタテインメントを仕事にする”とはいかなることなのかを覗くことができる虎の巻でもある。2013年の連載開始以来、編集を手掛ける「日経エンタテインメント!」編集部に取材の舞台裏を聞いた。【我妻弘崇/フリーライター】

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「言わせたいことがあるんでしょうけど、その手には乗りませんから」

「思っていないことは決して口にしない人ですね」

 堂本光一の印象を尋ねると、12年にわたって「エンタテイナーの条件」の取材を続けてきた担当編集・木村尚恵さんはそう語る。

「事前に、『次回はこういうお話を』とテーマ候補をマネージャーさんにお伝えして臨むのですが、いざ取材当日になると、『言わせたいことがあるんでしょうけど、その手には乗りませんから』と切り出したり、『特に話すことはないです』で終わったりすることも珍しくありません。だったら、もっと早い段階でそのテーマは話すことがないって教えてほしいと何度思ったか(笑)。読者の皆さんが想像している以上に、話を聞き出すための攻防が毎月繰り広げられています」(木村さん、以下同)

 反面、自分の言葉の影響力を深く理解しているがゆえに、責任の重さを分かっている人物であるとも評す。

「『SHOCK』初演時(2000年11月)、光一さんは21歳の若さで帝国劇場史上最年少座長を務め、以後、2024年のラストイヤー公演まで25年にわたって座長を務めてきた。過去には、舞台セット事故なども起きているのですが、そうした説明が求められるケースにおいては、「何が起きたか」について事細かに話してくれます。責任のある立場だからこそ、きちんと言葉で伝えなければいけないときは逃げない」

雑誌連載だからこそできた発信の中身

 それを如実に物語るのが、『エンタテイナーの条件2』に収録されている「僕のプライオリティー1位はファンの人たち」だろう。2023年11月号の「日経エンタテインメント!」に掲載された当コラムは、同年9月7日に行われた旧ジャニーズ事務所の性加害問題についての記者会見を経ての堂本の見解を記したもの。例えば、その一部を抜粋すると、

〈今後、そのイズムすら消し去るべきだと世の中が言うのであれば、僕にできることは何もない。だったら引退するしかありません〉

 という具合に、引退を覚悟する胸中を明かしているほどである。当時、静観を保つ所属タレントが多かった中で、杓子定規な言葉ではなく、真摯に持論を述べている点は、いま読み直しても抜群の読み応えがある。

「思うことがあれば言葉にする方です。彼としては『編集部が聞いてきたから……』という大前提がありますが、『そこまで言って大丈夫なの?』と時にヒヤヒヤするくらい」と木村さんが笑うように、事務所の名前が変わることについて、退所したタレントについて、自身の契約状況について――、驚くほど分け入っていく。渦中にいても恐れず言葉を紡ぐことで、『条件2』『条件3』の2作は、変わりゆく事務所のプロセスを知るという意味でも、極めて資料性が高いと言える。

「タレント自身がSNSをするようになって、『もう取材をして誌面で発信する時代じゃなくなるんじゃないですか?』という意味のことを言われたこともある。まだ続けてくれている理由を聞いたことはありませんが、タレント個人のSNSや会員向けの公式ブログではなく、私たちのような雑誌から発信することにも意味 価値を見出してくれている……と良いように解釈しています(笑)。“第三者”としての編集部が抱く疑問や問題意識を通して思いや考え方を届けることは、“公式”ではできない伝え方だと思っていますし、逆に言えばそれが紙の強さではないかと」

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