東大なんか入らなきゃよかった…地方公務員で味わった学歴“逆”差別 関大上司の嫉妬を煽ったフジの「悪趣味バラエティ」

国内 社会

  • ブックマーク

「さんまがやっていたみたいに東大をいじろう」

「嫌だったのは、ちょうどぼくが就職したころにテレビで『さんまの東大方程式』というバラエティー番組がはじまったことです。ゴールデンタイムにやっていて、定時であがった職場の連中がけっこう観みていたんですね。放送後しばらくは、その番組をネタによくいじられました」

「さんまの東大方程式」は2016年からフジテレビ系列で放送されているトークバラエティー番組だ。司会の明石家さんまと、スタジオのひな壇に並べられた数十名の現役東大生が繰り広げるトークが人気を博し、毎年春と秋の改編期の特番として、2024年8月時点で第11 弾までが放送されている。

「ある時の放送では、女性経験がない東大の男子学生が特集されたんでしょうね、その内容を引っ張ってきて、『吉岡も東大やし、童貞やろ?』とからかわれました。またある時は、東大生に昆虫でも食べさせていたのでしょうか、『自分も虫食ったりすんの?きしょ』なんて理由もなく中傷をされたりもしました。関西において明石家さんまの影響力って絶大なんですよ。『さんまがやっていたみたいに、俺らもうちの職場にいる東大をいじろう』ってなもんです。ぼくはその番組をたまたま目にすることはあっても、5分と観ることはないのですが、東大関係者にとってあれほど鬱陶しい番組はないですよ」

 本書の執筆にあたり僕も過去の放送回を取り寄せて改めて視聴してみたが、たしかに僕たち東大卒業生にとって見るに堪えないものだった。番組では、基本的に東大生を「変人」扱いすることで笑いをとっていたからだ。

恋愛経験に乏しい男子学生を嘲笑の的に…

 もちろん、バラエティー番組である以上、台本があり演出があり、素材に過剰な編集を施した結果なのだろうが、いずれにしても、この番組は東大生に対する世間の偏見を大いに助長するものだ。

 例えば、「東大生の歪ゆがんだ恋愛事情」と銘打ち、「東大生と結婚したい肉食女子」なる者たちをスタジオに連れてきて東大生とお見合いさせるという、なんとも醜悪な企画があった。そこでは、「東大生の遺伝子がほしい」などという下品極まりない言葉を平然と口にする女子大生を前に、朴訥とした東大男子たちは慌あわてふためき、スタジオ中が彼らを嘲笑の的にしていた。

 多くの東大男子は、中学・高校の青春期を受験勉強に捧ささげ、厳しい競争を勝ち抜いて東大に入学する。東大生を多く輩出する進学校の中には男子校も少なくない。さらには、近年の東大学部生の男女比は、男子約80%、女子約20%で推移しており、一般的な日本の大学の学部生の男子約54%、女子約46%に対して異様な偏りを見せている。

 したがって、二十歳そこそこの東大生、特に男子学生の大半は恋愛未経験者であろう。そんな彼らのまだ未熟な恋愛観を、あろうことか「歪んでいる」と断じ、異性経験がないことを日本全国のお茶の間にさらして辱める。こんな悪趣味なことがあるだろうか。

次ページ:「僕が関大出身ならこんなにつらい思いをすることはなかった」

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。