なぜ「使えない東大生」が職場で生まれるのか 上位0.3%の成績優秀者より “明大の飲食経験者”が求められる現実
日本企業で重宝されるのは「東大生ではなく明大生」
高学歴の人材の能力を高く評価して積極的に採用する欧米の企業とは異なり、日本企業は研究開発部門はともかくとして、高度な専門知識や高い問題解決能力よりも、その人物の「社会性」や「組織へなじむ力の高さ」を重視する傾向にある。
これは、昭和の時代から長きにわたり、終身雇用制度下での新卒一括採用と一律年次管理が長く行われてきた名残でもあるだろう。さすがに、縦に硬直化したこのシステムでは、人も物も情報も瞬時に横移動するグローバル社会を戦えないということになり、近年はスキルや経験、資格を重視した「ジョブ型雇用」の推進など、企業の採用に変化の兆きざしはある。しかし、その動きはまだ鈍い。
そんな日本企業において、大学卒業時点でもっとも社会人として即戦力に近い実力を備え、かつ組織の秩序を乱さない社会性を重宝されるのは、東大卒でも早稲田や慶應卒の人物でもなく、明治大学出身で飲食店アルバイトかインターンの経験のある学生である─。そう小林さんは断言した。
もちろん業種にもよるのだろうが、一般的な話として、ただ頭がいいだけの人間よりも、変なプライドがなく素直でコミュニケーション能力にすぐれた人材のほうが、組織秩序を重んじる多くの日本企業では大事にされるということなのだろう。東大卒で地頭がよいうえに、社会性があり、素直で、コミュニケーション能力の高い人材はもちろんいる。そういう人は最優先で採用されていく。
一方で、東大卒といっても、学校の勉強以外のことではろくな教育を受けておらず、協調性に乏しく日本型の組織になじめない人も少なくないのだった(それがいいか悪いかはまた別の話である)。
“数え役満”のヤバい「東大卒人材」にご用心
「これは余談ですが、中小企業の経営者さんが東大卒の人材を中途採用しようとする際は、少し慎重になったほうがいいかもしれませんね」
職場となじめなかったとき、新卒なら「ほかにやりたいことができた」だとか「資格試験に専念したい」などとのたまって、フイと退職してくれることも少なくない。
ところが、中途採用となると、周囲とのズレをものともせず居座り、トラブルにまで発展するということもしばしば起こるのだという。
「来月入社する中途の社員がどうも東大卒らしい。そりゃすごいね。東大卒の採用なんて、うちの会社はじまって以来だよ。前職はまったくの別業種らしい。なんでうちの会社に? 役員の紹介。部長の友だちの息子なんだって。年は30手前で独身の男……とまあ、このあたりまで合致すれば間違いないですよ。麻雀でいうところの『数え役満』ですね。当たったらヤバい」
これはなにも、学歴にかぎった話ではない。人事担当者は客観的に見て自社に不相応な経歴の人間をホイホイと安易に採用すべきではないということだろう。よく言われるように、「安いものには理由がある」のである。
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この記事の後編では、引き続き『東大なんか入らなきゃよかった』(新潮文庫)より、著者の池田渓氏が実際に見聞きした「東大出身者への職場での壮絶ないじめ」について取り上げている。東大イジメの一因には、フジテレビの「ある番組」の存在があるという――。
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