なぜ「使えない東大生」が職場で生まれるのか 上位0.3%の成績優秀者より “明大の飲食経験者”が求められる現実

国内 社会

  • ブックマーク

採用担当者が「東大までの人」と呼ぶ「残念な学生」たち

 ところが、我らが東大生に関しては、各企業の採用担当者たちが口をそろえて指摘する奇妙な現象があるという。

「僕らは『東大までの人』と呼んでいますね。『あの子は東大までの人だよね』って」

 小林さんはなにやら小ばかにした口調でそう言った。学歴社会の頂点とされる東大生にかぎって、就職活動の場での評価が極端にお粗末な者がいるのだという。

「エントリー数は少ないし、行動量も少ない。小手先の訓練で伸ばせるSPI(適性検査)の偏差値を伸ばす努力もしていない。面接でも熱意がなく、最低限の業界研究すらしてこない。ちょっと突っ込んだ話をすると、まるでFラン大学で遊びほうけていた学生みたいにトンチンカンな応答に終始して、まったく話がかみ合わない。『東大までの人』の就職活動は、こんな調子なんですよ」

「大学別に企業説明会の日程が用意されているし、書類選考も悪名高い『学歴フィルター』で素通りできるから、必死になる必要がないんじゃないですか?」

 僕がそう尋ねると、小林さんは「問題の根はもっと深いんですよ」とかぶりを振った。

「『東大までの人』たちは、社会に興味がないんです。より正確に言うと、興味がないわけではないんでしょうが、社会で成功したい・成功するべきだという欲求は人一倍強いのに、その過程をまったくイメージできていないんです。『30歳までに年収1000万円ほしい』『将来は経営者になりたい』といった願望だけは強いのですが、それを叶えるためにはどんな仕事に就いて、どういうキャリアパスをたどるべきかという具体的なビジョンがまったくもって貧困なんです。それなのに、なぜか自信だけは満々だったりすると本当に困りますね」

 耳の痛い話だった。東大大学院の博士課程まで進学し、人より長く大学に在籍していた僕も、実社会に対するイメージはずっと希薄だった。社会への興味もほとんどなかった。「物心」がようやくついたのは、就職してしばらくたった30歳手前のころだったように思う。

「これまでどおり一生懸命勉強してれば、勝手に誰かが評価してくれると思っているんでしょう。要するに、甘えですよ。まあ困るのは、志望者が殺到するような大手優良企業にかぎって、そういう東大生を期待値込みで採用していくことなんですが」

「でも、基本的には期待どおりの活躍はするんでしょう?」と、尋ねると。

「まあ、そうですね。大手は大手で露骨な幹部養成コースみたいなキャリアパスが整っていることも多いですし、敷かれたレールの上を走るのは得意な子たちですからね。アベレージとして、東大生が優秀なのは確かです。ここで僕が問題としているのは、『東大までの人』ですね。並の東大生が優秀なぶん、悪目立ちしているところもあります。いずれにしても、正直、仕事ではあまり使えない人たちです」

次ページ:日本企業で重宝されるのは「東大生ではなく明大生」

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。