「発注を取り消されるのが怖い」「ウチのような下請けは…」 トランプ関税に企業城下町から悲鳴
550万人もの雇用を生み出す自動車産業
【前後編の後編/前編からの続き】
「米国の『解放の日』の始まりだ」――。そう米大統領が息巻くと、東証の平均株価は今年最大の下げ幅を記録した。日本経済の根幹である自動車業界に激震が走っているが、われわれになすすべはあるのだろうか。
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前編【「400万円の車は100万円以上高くなる」 トランプ関税の大打撃 最も影響を受けるのは「スバルとマツダ」という理由】では、トランプ関税による大打撃を受ける自動車産業について、影響を受ける企業、逆に影響の少ない企業について紹介した。
日本の自動車産業は、550万人もの雇用を生み出しているとの試算がある。
例えば、ある地方都市に自動車メーカーが巨大工場を造れば、そこには大勢の人が集い活況を呈する。
工員だけではない。メーカーの工場と取引する下請けの中小企業、そこへ部品を納める町工場に加えて、完成した車を輸送する物流業者。そうした人々の暮らしを支える飲食店などの小売店が建ち並ぶ「企業城下町」が形成される。
企業城下町にとって最悪のシナリオ
「先日、マツダの工場がある広島で講演会を開きましたが、参加してくださった自動車関係の皆さんから“この先、どうなっちゃうのか”という懸念の声が聞こえてきました」
と振り返るのは、自動車評論家の国沢光宏氏。
「トヨタが持つ大きな工場は、愛知と東北、九州にあります。主にアメリカ向けの車は愛知で作っているので影響は出るでしょう。ホンダや三菱はほとんど日本から米国向けに輸出していないので、大きな影響を受けるのはマツダの広島とスバルのある北関東一帯です。スバルは群馬のみならず、栃木や埼玉にも拠点がありますからね」
米国へ輸出する車の多くを、日本国内で生産しているスバルとマツダ。関税の影響で米国向けの車が売れなくなれば減産が続き、挙句に工場ごと米国移転という、企業城下町にとっては最悪のシナリオさえ想定されるのだ。
国沢氏が続けて話す。
「長い目で見ると、自動車メーカーはアメリカに工場を移しても、収益を上げられれば問題はありませんが、企業城下町に取り残された中小企業、そして膨大な雇用を失った地方自治体への影響は甚大です」
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