有料読者「1000万人超」ニューヨークタイムズがサブスクで成功した最大の理由と“その次” カギを握る「10%の読者」のニーズとは

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NYTに続く意外な成功例

 国際ニュースメディア協会(International News Media Association)研究員のグレッグ・ピチョッタ(Greg Piechota)氏は、NYTがGoogleやXといったプラットフォーマーに頼らず、読者の直接の流入を増やす施策を打っていることに着目している。

「有料会員を増やすためには『自社のファン』をいかに育てられるかが全てと言っていいでしょう。GoogleやXなどを通して流入する読者よりも、『直接サイトに訪れる読者』を増やす方が、会員獲得には効果的です。その点、NYTは直接流入する読者を増やすことに熱心。ブランド広告やウェブサイト・アプリのUX/UI向上のための投資額は平均的なメディアよりも10%程度高い(対販管費)と推察されます。『サブスク読者ファースト』を貫いているということです」

 とはいえ、NYTのように資本力があり、記者の数も多い巨大な新聞社ばかりが成功しているわけではない。世界を見渡せば、調査報道やオピニオン、文芸に定評のある雑誌系メディアも健闘している。

 ニューマン氏が紹介するのは、フランスの調査報道専門ニュースサイトのメディアパート(Mediapart)だ。2008年に創刊された同サイトはネット専門媒体で広告収入は「ゼロ」だが、約22万人のサブスク会員に支えられている。

〈有料版の記事【「ジリ貧」の“オールドメディア”は生き残れるか 世界のメディア研究者が提言する「10%の知的エリート」に届けるサブスク戦略】では、「メディアパート」が多くのサブスク会員を獲得している理由や、その他雑誌系メディアの“成功例”と“失敗例”、そしてニューマン氏とピチョッタ氏による日本市場への提言などについて詳述している〉

湯浅大輝(ゆあさ だいき)
フリーランスジャーナリスト。同志社大学在学中に米アリゾナ州立大学へ交換留学。卒業後、記者としてのキャリアを開始し、経済メディア、小売専門誌を経て独立。教育、小売、海外スタートアップ、国際情勢、インフラなど多様なテーマを取材・執筆している。過去携わった書籍に『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)、主な特集記事に「出生数75.8万人の衝撃」「奈良のシカ」(ともにJBpress)、「リニア 20世紀最後の巨大プロジェクト」(NewsPicks)、「精肉MDの新常識」(ダイヤモンド・チェーンストア誌)など。

デイリー新潮編集部

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