「初任給30万円」に釣られて入社の“落とし穴”…「氷河期世代だけではない」最も割を食うのはどの世代か 専門家が明かす“給与のカラクリ”

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“先輩社員”の給与は

 ちなみに、“初任給アップ”の前に入社した若手社員の処遇については、

「『初任給』ばかりがクローズアップされているところはありますが、若年層の給与自体がベースアップされていると見た方が正確かもしれません。住民税などは別として、先輩社員の方が1年目社員より給与が低いということにはならないようグラデーションがつけられるはずです」

 ただし、と安藤氏。

「ミドル世代の減収によって成り立っているベースアップですから、初任給の高さに飛びついて入社しても、生涯賃金自体が上がっているわけではないことには注意が必要でしょう。従来、入社当初は抑えめで、3、40代から一気に昇給することが多かったのが、フラット化されたイメージでしょうか。自分がもらえる給料も“ゼロサム”というわけですね」

 逆に言えば、若いうちの転職を前提とするなら、初任給アップを表明した企業の方が労働に見合った給料がもらえるという見方もできるかもしれない。

 なお安藤氏は、「消費にまわる分が大きい若年層の給与が上がることは、日本経済全体にはポジティブな面もある」としつつ、こうも付け加える。

「やはり就職氷河期への対処は、社会全体として考えていかなければならないでしょう。世代全体として、就職に苦労し、また能力に応じた給与がもらえていなかった面はありますからね。とはいえ、今回初任給アップが取り沙汰されている企業に関していえば、ステルス減収が見込まれるのは、給与水準の高い正社員の話です。もちろんその方々にとって不遇な面もあるとは思いますが、非正規で苦労されている方々の話との議論とは分けて考える必要があるかと思われます」

デイリー新潮編集部

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