「梨元に言いつけるぞ!」を広めた大物俳優とは? 日本一有名な「芸能リポーター」が明かした「勝新太郎」の豪快過ぎる秘話
俳優、歌手、タレント、芸人……第一線で活躍する有名人たちの“心の支え”になっている言葉、運命を変えた人との出会いは何か――。コラムニストの峯田淳さんは、日刊ゲンダイ編集委員として数多くのインタビュー記事を執筆・担当し、現在も同紙で記事を手がけています。そんな峯田さんが綴る「人生を変えた『あの人』のひと言」。第10回は芸能リポーターとして大活躍した梨元勝さんの知られざる素顔を紹介します。
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あの言葉を考えたのは……
「梨元に言いつけるぞ」とは、芸能リポートの仕事を一言で表現した名言であり、かつては流行語でもあった。
コンプライアンス全盛でワイドショーの勢いがそがれた今、芸能リポーターという言葉は死語も同然だが、週刊誌記者から芸能リポーターに転身した梨元勝が活躍した時代は、日本も大らかだった。
スキャンダルを起こした芸能人は昼夜を問わず芸能リポーターに突撃され、今の時代ではあり得ないコメントを出して難を逃れようとし、芸能リポーターがそれにさらに突っ込みを入れる。丁々発止のやり取りは今思えば、テレビショーでもあった。その中でも梨元はテレビだけでなく週刊誌やスポーツ紙と、八面六臂の大活躍だった。その梨元に言いつけられたら……。
いつから誰もがくそマジメを装い、自分は正しいという安全地帯に身を置くことに汲々とするつまらない時代になったのか。泉下の人となった梨元ならどう思うだろうか。
「梨元に言いつけるぞ」
この言葉は誰が発したものか……。てっきり勝新こと勝新太郎と思い込んでいたのだが、実は山城新伍だった。梨元が芸能人のスキャンダルを追いかけ、夜討ち朝駆けでどこでも突撃するので、いつの頃からか芸能関係者の間で「梨元に言いつけるぞ」と言われるようになった。そして自身もスキャンダルを追及されたことがある山城は、彼らしいジョークを交えてテレビでしゃべり、それが後世に伝わるに至った。
ワイドショー全盛で、芸能マスコミも元気があった時代に、「梨元に言いつけるぞ」とは実にリアルな言葉だった。
ここからは梨元ではなく梨元さんと呼ぶ。誰からも「梨元さん」と親しまれ、名前そのものがキャラクターのような人だったので、そう呼ばないとちょっと居心地が悪い。
梨元さんには十数年以上も前、「涙と笑いの酒人生」というテーマで話を伺った。当然、大物芸能人の裏話を面白おかしく語ってくれた。例えば勝新。
「取材した後で、銀座のクラブに飲みに行こうとなって。あの時はすごかった。何も食べずに店まで行って、いきなり『オレは焼き肉と焼き魚を食いたい』って。お店が食事を都合してくると勝さんは『オレはうれしい。今日はお礼に踊る』なんて言って。『マイウェイ』をかけさせながらハサミを持ってこさせる。ハサミを手にすると、まずはネクタイをチョッキン。次はワイシャツのすそ、襟、袖をジョキジョキ切っていって『梨元、Tシャツのできあがりだ』なんて言うんだよ。これには店中が盛り上がりました」(日刊ゲンダイ08年4月8日付け)
勝新はそのTシャツを着て踊り、歌い出したという。
このエピソードは10年に他界する直前に上梓した『絶筆 梨元です、恐縮です。』にも書かれている。その中では「Tシャツだあ!」と、紹介されている。
「恐縮です」と言いながら、取材対象に突撃する梨元さんは、自身が安全地帯にいて、正義を振りかざして相手に迫るような人ではなかった。勝新のエピソードにしろ、まさに自ら突撃して相手の懐に入り、真相や本音を聞こう、探ろうとしていた。
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