「都会の廃墟」が「映えるロケ地」に…超一流アーティストも利用する「東成田駅」の軌跡
不釣り合いな広いホームと構内
オーディション番組「No No Girls」から生まれたガールズグループ「HANA」のプレデビュー曲「Drop」のMVが2月から公開されている。その舞台は地下の廃墟めいた空間なのだが、実は流転の歴史を持った「都会の廃墟」だった。意外な形で注目が集まっている舞台の歴史を紐解く。【大宮高史/ライター】
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【写真】「都会の廃墟」から「映えるロケ地」に…レトロ感がすごい「東成田駅」の全貌
薄暗いエレベータホールのような空間から始まる「Drop」のMV。メンバーが踊るバックで改札機らしきものが見え、無機質な地下空間をバックに踊る映像が続く。途中、駅のホームのような場所が2カ所現れ、さらに荒廃した空間でメンバーのKOHARUが落ちた花を拾ってカートに乗せている。
HANAのファンから大きな反響があったこのMVは、京成電鉄の東成田駅と相鉄の湘南台駅で撮られたものとわかる。特に東成田駅を選んだことで、荒涼とした空間からメンバーが立ち上がる力強さが視る者に伝わってくる。
東成田駅は、東京都内から京成電車に乗ると成田空港手前の京成成田駅で空港方面と分かれ、1駅で到着する。成田空港に行かないため京成にとっては支線扱いで、地下のホームに人はまばら。2023年度の1日平均乗降人員は1928人で、京成の全69駅中66位とさびれている。
ところが、そんな閑散とした駅だが、不釣り合いな広いホームと構内を持っている。というのも、かつてはこの駅こそが成田空港へのアクセス駅だったためだ。
東成田駅の開業日は1978年5月21日。成田空港の開港翌日であり、当時はこの駅が「成田空港駅」と名乗っていた。当時成田空港への鉄道は京成のみで、空港利用者のための広いコンコースが設けられた。「Drop」のMVで、花が落ちていた空間がこのコンコースになる。
当時、京成は東京・上野から「スカイライナー」など空港アクセス列車を走らせるが、空港ターミナルビルには直結していないため、駅からは連絡バスに乗る必要があった。スーツケースを抱えてのバス乗り継ぎは面倒で、スカイライナーの乗客数も伸び悩む。
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