独立が決まり号泣する「小松政夫さん」に師匠「植木等さん」がかけた“粋なひと言”とは… “昭和の無責任男”秘話
第1回【「私を父親と思えばいい」…元付き人・小松政夫さんが見た大スター「植木等さん」の“無責任男”ではない素顔】を読む
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クレージーキャッツのメンバーとして
2007年3月27日、元クレージーキャッツの植木等さんが肺気腫による呼吸不全でこの世を去った。享年80。1959（昭和34）年頃からクレージーキャッツのメンバーとして本格的に活動を始め、高度成長期の熱気とともにたちまちスターの座を獲得した。その全盛期だった1964（昭和39）年から3年10カ月、付き人として仕えていたのは俳優の小松政夫氏（2020年12月7日死去、享年78）だ。生前の小松氏が語った“昭和の無責任男”の知られざるエピソードをお届けする。
（全2回の第2回：「週刊新潮」2007年4月12日号「元付き人『小松政夫』が語る植木等秘話『さらば無責任男』」をもとに再構成しました。文中の日付等は掲載当時のままです）
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明日からもう来なくていい
〈植木氏の推挙もあって、小松氏は付き人時代からすでに単独の仕事も入るようになっていた。が、本格的な独立は、ある日、突然だった。〉
そりゃ、青天の霹靂ですよ。いつものように車で送ってると、後部座席でオヤジがずっと黙っててね。疲れて寝てると思ったら、いきなり顔を寄せてきて言うんです。昨日、事務所の社長にお前の独立の話をして、もうマネージャーも給料も決めたからって。だから、明日からもう来なくていいってね。
涙、止まんなかったですよ。道路の端に車停めまして、暫く泣きました。で、これがまたオヤジの粋なとこで、頃合いをみて、「別に急いでないけどな、ま、そろそろ行くか」。
オヤジからは、ホントにいろんなことを教わりました。人間観察の大切さもそうです。役者ってのは、鋭い観察力が必要だ。人から手取り足取り教わるんじゃなくて、お前が好きな役者さんの演技をよっく観て、それで吸収するんだって。
「無責任男はそんなんじゃない」と言われ
オヤジ自身は、自分の無責任男っていうイメージについて悩んでる時期もありました。ある時、私に、「俺にも芝居させてほしいんだよなあ」とポツリとこぼしたことがあったんです。
映画の撮影の時ですが、ちょっとした仕草で自分なりにシリアスな演技をやろうとしたら、監督から、無責任男はそんなんじゃない、そんなの考えちゃダメって言われましてね。自分も“本格的な芝居”をしたいって思いがあったんでしょうね。まあ、映画は監督のものなんだからと考えて、自分を納得させてたみたいです。
《70年代以降、植木氏の主演映画は少なくなり、逆に、独立した小松氏の仕事が増える。》
やっぱり、植木等ほどのスーパースターが軽い役では出られませんからね。あの頃が一番、苦しかったと思います。独立してからも、最低、年に2回は会いに行ってましたが、そんな時、「最近ヒマだからテレビ見てるけど、お前が活躍してるの見ると、俺も鼻が高いよ。俺ももう一花咲かせなきゃいけないなあっていつも思うんだ」ってね。
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