智弁和歌山の“凛々しい虎”がリードした「90球の完封劇」 2年生捕手、山田凛虎に感じた“大器の予感”

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「打撃はここぞという場面で結果を出してくれることが多い」

 一方、打撃面は、1回、2点を先制した後に回ってきた第1打席で、貴重な追加点となるセカンド強襲のタイムリーを放った。

 続く第4打席には、鋭くレフト前に引っ張って、マルチヒットをマークしている。昨秋の近畿大会では、4試合で14打数8安打と好成績を叩き出しているが、冬の期間に、タイミングのとり方を意識して、左足の上げ方を少し小さくしたという。この意識の高さが、“甲子園での2安打”に繋がった。

 智弁和歌山を進学先に選んだ理由は、1997年、夏の甲子園で智弁和歌山を全国制覇に導いた捕手である中谷仁監督のもとで、レベルアップを図りたい気持ちがあったそうだ。

“師匠”中谷監督に、山田のプレーについて聞いてみた。

「山田は甲子園でのプレーは初めてでしたが、今日“も”良かったですね。まだまだ成長してもらいたい部分はありますが、落ち着いて、渡辺の良さを引き出してくれたと思います」

 守備面を高く評価したうえで、こう続けた。

「打撃は勝負強いというか、ここぞという場面で結果を出してくれることが多い。『頼もしいな』と思って見ていました。(山田が、中谷監督のもとで学びたいから入学したことについては)本当ですか? そう言われると私もプレッシャーがかかるので、着実に一歩一歩やっていくことかなと思います。(この1年間の成長については)順調かどうかは、何をゴールにするかで違うので何とも言えませんが、私が教えられる以上のことも身に着けていってもらいたいので、まだまだ2人で一緒に勉強しながらやっていきます」

 中谷監督が智弁和歌山で指導した捕手といえば、2019年のドラフト4位でDeNAに入団した東妻純平をはじめ、現在、青山学院大の渡部海(3年)も来年のドラフトで有力候補とされる。山田のプレーは、彼ら先輩の高校時代と比較しても、決して見劣りしないレベルだ。

 ちなみに、凛虎(りとら)という名前は、両親が「凛とした虎のような男」になってほしいとの思いを込めて、命名したという。

 そして、3月26日に行われた2回戦の広島商戦は、智弁和歌山が7対0で完封勝利。山田は、渡辺と宮口龍斗(3年)を好リードし、打っては3打数2安打1打点と存在感を示した。ここからさらに“凛々しさ”が増していくのか、ますますの飛躍に期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。