通算300盗塁の節目で起きた「誤判定」 選手は猛抗議、マスコットガールは棒立ちに…盗塁記録をめぐる「珍ハプニング」で球場が騒然

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公式記録員からの指摘に、シラーっとした空気が流れた

 一方、通算200盗塁が幻と消えてしまったのが、日本ハム時代の西川遥輝である。2018年5月30日の巨人戦、9回2死から左越え二塁打で出塁した西川は、巨人のリリーフ・カミネロが打者に集中して無警戒とみると、初球にスタートを切り、見事三盗を成功させた。

 直後、場内の大型ビジョンにも「西川選手通算200盗塁」のメッセージが映し出され、史上75人目の快挙が達成されたかにみえた。

 ところが、公式記録員から「巨人の野手が走者に無関心、無警戒の中での進塁になるので、野手選択です」の指摘があり、一転快挙は幻に。「西川選手の三塁への進塁は盗塁ではありません。訂正してお詫び申し上げます」の場内放送も入り、シラーっとした空気が流れたのは言うまでもない。西川も「定義がよくわからないんですけど……」と困惑の様子だった。

 そんなハプニングにもめげず、西川は6月1日の中日戦の2回に2点タイムリーを放った直後に二盗を決め、正真正銘の通算200盗塁を達成した。

 西川とはシチュエーションが異なるが、冒頭で紹介した山田哲人も、トリプルスリー達成の30盗塁目が幻と消えるハプニングを経験している。

 2018年8月26日のDeNA戦、この日まで打率.319、30本塁打、28盗塁の山田は、3回に29個目の盗塁を決め、NPB史上初の3度目のトリプルスリーにリーチをかけた。

 そして、5回にも1死から四球で出塁すると、次打者・バレンティンのカウント2-2のときにスタートを切り、二塁に滑り込んでセーフ。スタンドからも快挙を祝う大歓声が起きた。

 だが、ここからまさかのどんでん返しが起きる。バレンティンが空振り三振に倒れた際に、バットが勢い余って捕手の嶺井博希に接触していたことから、ボールデッドを取られ、一塁に戻されてしまったのだ。故意の接触ではないと判断され、守備妨害による併殺は適用されなかったものの、トリプルスリー達成は先送りとなった。

「(バレンティンが)空振りしたところまでしか見ていない。(審判に)『戻って』と言われたから妨害があったんだと思った」と苦笑いした山田は、8月31日の広島戦の7回にシーズン30盗塁を記録し、5日遅れでトリプルスリーを達成した。

 両リーグを代表する足のスペシャリスト、周東、山田のどちらが先に通算200盗塁を達成するのか、“ハプニング”を期待する気持ちを抑えながら、注目して見守りたい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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