屈辱にまみれた西武に“復活の兆し”が…「逆襲の獅子」の鍵になる選手とは

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投手陣にも明るい兆しが?

 また、ルーキー以外の新戦力でも楽しみな存在がいる。現役ドラフトでロッテから移籍した平沢大河と、ソフトバンクを自由契約になり、育成選手で加入した仲田慶介だ。

 平沢は、3月9日の楽天戦で2点タイムリースリーベースを放つと、その後の試合ではヒットが出なくても、毎試合四球を選び、持ち味である出塁率の高さを見せている。それに加えて、内外野を守れる点も魅力だ。

 一方、仲田は、スタメンで起用された3月8日の楽天戦、14日と16日の中日戦の3試合でヒットを放ち、3割近い打率を残している。このまま順調にいけば、開幕前に支配下昇格の可能性が高い。昨季までレギュラーだった外崎修汰が、サードにコンバートされており、セカンドのレギュラー争いに新たな顔ぶれが絡むことは、チームの活性化に繋がっている。

 投手陣の“明るい材料”は、エース・高橋光成の復調だ。昨季は開幕から不安定な投球が続き、15試合に先発して0勝11敗という、まさかの成績に終わっている。チームにとっては、最も大きな誤算だった。

 しかしながら、今年はキャンプから順調な調整を続けており、3月9日の楽天戦では3回を無失点、16日の中日戦では5回を無失点といずれも見事な投球を披露した。

 他の先発投手陣を見えて、今井達也と隅田知一郎は、年々安定感を増しており、怪我で出遅れている武内夏暉や松本航らも控えている。それだけに、高橋が本来の姿を取り戻すことができれば、他球団を凌ぐ強力なローテーションを組むことが可能になる。

チームの規律を守ろうとする西口監督の姿勢

 もうひとつ好感が持てる点が、西口文也新監督の選手に対する姿勢だ。契約更改の場で、先発での起用を志願した平良海馬に対して自ら連絡を入れてリリーフ転向を説得したほか、唯一のレギュラーと明言していた源田壮亮もオフに報道された不倫問題を受けて白紙とし、3月に入ってからも、移動時間に遅刻した佐藤龍世に対して「三軍降格」というペナルティを課している。

 こういった懲罰的な処分に対して批判的な意見がある一方で、チームの規律を守るために、指揮官が厳正な態度を示すということは必要だ。低迷したチームにとって、プラス材料になるのではないか。

 そして、西武の伝統的な強みは、グラウンド以外のところにもある。それは独自のスカウティングで、選手を発掘してきたところだ。他球団のスカウトは、こう話している。

「この試合は、他の球団のスカウトは来ていないだろうと思っていると、西武のスカウトだけが来ているということがよくあります。本当に高いアンテナを張っていると思いますねえ。これまで、あまりプロ選手が出ていなかった高校や、地方の大学、独立リーグなどの選手も積極的に指名しています。他の球団とは違うところから選手を探してくる……この意識は強いと思いますね」(他球団の関東地区担当スカウト)

 他の元スカウトに話を聞くと、ある地方大学の選手を調査した時に西武のスカウトが深く入り込んでおり、こちらの動きが、全て西武に筒抜けだったということを話していた。西武とダイエーで監督などを務め、“球界の寝業師”と呼ばれた故・根本陸男氏は、全国に情報網を張り巡らせて選手を獲得して、両球団で黄金時代を築いた。そのイズムは、今も確実に残っている。

 昨季の屈辱から立ち上がり、パ・リーグの優勝争いへ。「逆襲の獅子」に期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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