高田馬場「人気ライバー刺殺事件」が残した重い教訓 「アルバイト感覚の動画配信」「投げ銭」が深刻なトラブルを招く理由
室内であっても場所は特定される
「やはり屋外でのライブ配信を一人で行っていたというのが大きいと思います。自撮り棒を使って配信に集中するので、周りに注意が行かなくなってしまいます。しかも、今回、佐藤さんは事前に“3・11山手線徒歩一周”の企画を告知していました。それを知った高野容疑者は上京し、動画を見つつ場所を特定したのです」(井上氏)
防ぐ方法はあるのだろうか。
「これといった防衛策はありません。強いて言えば、屋外で配信する場合は家族や友人などに同行してもらって複数人で行うこと。室内で行った場合でも、窓の外の景色から場所が特定される可能性があります。20年近く前の2ちゃんねる時代、島根県のひなびた場所からの配信でも30分程度で特定した人がいました。今やツールも揃っていますし、ネット上には不動産サイトの間取りや写真も残っています。変わった間取りであったりすれば、さらに早く特定される可能性が高くなります」(井上氏)
今回は犯行の様子までもが配信されてしまった。それを見た視聴者も少なからずいる。
「豊田商事会長刺殺事件を思い起こした人もいるかもしれません」(井上氏)
40年前の事件を彷彿
ちょうど40年前となる1985年6月18日、悪徳商法で総額2000億円もの巨大詐欺事件を起こした豊田商事の永野一男会長が自宅マンションで刺殺された事件だ。詐欺の被害者は数万人にものぼった。事件当日、永野氏の逮捕が近いと自宅前にはマスコミが集まり、テレビで中継されていた。そこへ現れた二人組が窓ガラスを割って自宅に侵入。血まみれとなった永野氏の姿がテレビに映し出された。
「金額と規模は異なりますが、金銭トラブルによる犯行であることに変わりはありません。アルバイト気分で配信する人も、お金は恐ろしいものになり得ることを心にとどめていただきたいです」(井上氏)
流行りの“投げ銭”もトラブルの温床となり得るという。
「今回の件とは直接関係ありませんが、ライバーの推し活として広まる“投げ銭”のシステムも問題視されるようになるかもしれません。配信者に対して電子決済で金銭的支援を行うものですが、今やファンの愛情を計る基準が“投げ銭“の額であり、それを競わせるライバーもいる。ファンの気持ちは金額で表すことはできません。しかし、多額の“投げ銭”をしたにもかかわらず『感謝してくれない』『自分の名前を呼んでくれない』と逆恨みし、トラブルに発展する可能性もあるのです」(井上氏)
金の切れ目が縁の切れ目とは、お金を受け取った側には実に都合のいい言葉だが、出した側にとってはそうではない。ましてや推し活のような気持ちを込めた人には、可愛さ余って憎さ百倍ともなり得る。たとえそれが“投げ銭”であっても……。