京大卒の頭脳派ウォーカー「山西利和」が世界新記録 失格を招いた「厚底シューズ」が復活の原動力に
一時は引退を考えた
東京五輪20キロ競歩銅メダリストの山西利和(29)といえば、京大工学部卒の“頭脳派ウォーカー”として知られている。
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世界陸上選手権は2019年ドーハ大会、22年オレゴン大会を連覇。ところが、23年ブダペスト大会はトップと周回遅れの24位に沈んだ。その半年後に行われた日本選手権も、歩型が乱れて失格となり、パリ五輪代表入りを逃している。
山西はなぜ失墜したのか。
「厚底シューズのせいです」
と、スポーツ紙記者。
マラソン界で定番となった厚底は、競歩界にも浸透し始めた。が、バネ付き靴のようなそれは、反発係数が高く、ジャンプするような感覚になる。ゆえに、両足が同時に地面から離れてはいけない競歩では反則を誘発しやすい。
「厚底を履きこなすには、歩型を一から作り直さなければなりません。日本勢が世界大会を席巻していた間、海外勢は厚底の履きこなし術を習得し、やがて日本を凌駕(りょうが)していきました」
山西はブダペストから厚底を導入したが、履きこなすのは容易でなかった。一時は引退を考えたという。
厚底に対応した歩型をマスター
そんな彼が今月16日に行われた日本選手権で1時間16分10秒の世界新記録を樹立した。9月に東京で行われる世界選手権の派遣設定記録も突破し、代表の座もつかんだ。
復活の原動力――それもまた“厚底”だった。
「厚底に対応した歩型を完全に習得した山西は、自身の世界新を予想していたようです。ゴール直後は笑顔もガッツポーズもなく、サバサバしていました」
今大会は、山西含め6選手が派遣設定記録を突破。山西のみならず、“競歩大国ニッポン”の復活劇でもあった。
「東京開催の世陸で金が期待できるのはやり投げの北口榛花ただ一人でしたが、これで競歩も金メダル争いが楽しみになりました」
コースは国立競技場とその周辺。彼らの雄姿を生でこの目に焼き付けたい。






