小室佳代さんが作りたかったのは料理よりも「お嬢様イメージ」 「“世間につけられた下品な印象を覆してやる”という強い決意が」
育児も料理も……「ズレている」ことで強まる「選ばれし者」としてのポジション
育児ノンフィクションとはいうものの、佳代さんの育児テクニックを再現できる人はそういない気がする。個人的には「おかあさま」と呼んでいたはずの息子が、中学生を過ぎたあたりから佳代さんのことを「あなた」と呼んでいるような記述に引っかかった。「あなたは結婚した方がいいよ」と度々言っていたという思い出に始まり、「もっとあなたらしく」「あ、そう。それはあなたの意見ね」など、親子が逆転したかのようなやりとりも記されている。不思議な親子関係というか、息子から軽んじられているように見えるのだが、佳代さんが掲げるのは「自由主義」とのこと。息子から「叔母さんみたい(な距離感)」と言われても、ベタベタしない子育てを評価してもらえたと、ポジティブに受け止めてきたようだ。
「ズレている」という批判は、セレブを目指す人にはむしろ褒め言葉に聞こえることだろう。お金持ちの子女たちのぶっ飛んだ金銭感覚や行動規範は、眉をひそめられるより、「浮世離れしたセレブならでは」と好意的に解釈してもらえることも多い。
メーガン妃の番組もまた、カリフォルニアの山火事による被害など、食事さえ満足に取れない人もいるのにセレブパーティーごっこかと批判が出ているという。佳代さんの「ザワーブラテン」も、材料を一式そろえるだけでも結構な費用が飛ぶ。白ワインに月桂樹、野菜だって今は高い。それを3日もかけて作るような時間もお金も余裕がある人が、日本にどれだけいることだろうとは思ってしまった。
心身に不調をきたすほどバッシングされながらも、世間の同情や共感を集めることにはあまり関心のなさそうな佳代さんのエッセイ本。ドイツでは「名よりも実を取る」という意味の「空腹を満たすのは月桂樹の葉(古代ローマで王冠に使われた)ではなくジャガイモ」ということわざがあるというが、自伝も爆売れで「お嬢さん」イメージも収入も手に入れた佳代さんの、“料理上手”ぶりにはうなるばかりである。
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