“闇バイト強盗”に“すり替え”、“精巧なコピーの持ち込み”も…「高級時計専門店」が頭を抱える“犯罪”の最新実態
百貨店で起きている水面下の窃盗事件
さて、地方の百貨店の苦境が報じられているが、都心の百貨店はインバウンドの増加によって好調な業績が続いている。休日にもなれば、百貨店の1階の化粧品・宝飾品売り場は客でごった返すようになった。しかし、大手百貨店の1階の宝飾品売り場に勤務するZ氏は、こんな悩みを打ち明ける。
「うちの百貨店では、ジュエリーやネックレスの盗難が何度か起こっています。品物をトレーに出させて、店員がふと目を離した瞬間にサッと奪って逃走する手口です。一般的な強盗は、走って逃げるイメージがあるでしょう。最近の強盗はそうした素振りを見せない。一瞬の隙を突き、客に紛れて巧妙に逃げてしまうのです」
Z氏はそうした現場に遭遇したことはないが、上司が「やられた」のだという。犯人の動きは闇バイトとは異なり、「まるで忍者のようだった」といい、熟練の技のようなものを感じたそうだ。その時、店内は満員電車のように混雑しており、犯人はスリが人込みに紛れて逃走するように、品物だけを奪って一瞬のうちに消えてしまったそうである。
ところが、Z氏によると、店側も信用問題に関わるということで、そういった事例を公表していないという。言ってしまえば“万引き”なのだが、一点数万円、時には数十万円にもなる商品も多いだけに、対策は急務であるはずだ。しかし、「以前はトレーに3点まで品物を出していたが、現在は1点に絞るようにしている」程度なのだそうだ。まったくと言っていいほど、抜本的な対策になっていないといえる。
偽物がますます精巧になっている
強盗以外にも、時計専門店や貴金属店を悩ませる問題は尽きない。最大の負担になっているのは、ますますクオリティが向上している偽物の存在だ。デイリー新潮では2年前、偽物に向き合うブランド品店を取材した。現在はその頃よりも、さらに巧妙になり、本物と瓜二つの偽物が出現しているという。前出のX氏が実情を話す。
「もちろん私は日々勉強をしていますし、高級腕時計の鑑定には自信があります。ただ、熟練のスタッフでも一瞬迷ってしまうような、精巧な偽物が出回っているのは事実です。ロレックスの場合、裏蓋を開けて中の機械を見れば基本的にわかるのですが、お客さんの前ではそれもできないし、スピーディーに鑑定しないといけないので、気が抜けませんよ」
なお、最近は機械も精巧にコピーしている偽物が多いといい、本物を常に触っているスタッフでなければ見分けがつかないほどだという。X氏が不安視するのは、昨今増加しているフランチャイズのブランド品買い取り店である。「我々も間違ってしまうことがあるのに、少し研修を受けた程度でわかるようになるとは思えない。率直に心配ですし、偽物をつかまされていなければいいのですが…」と、X氏。
高級腕時計や貴金属の買い取りを行う業種は、一昔前は利益率も高く、おいしい仕事と考えられて新規参入が相次いだ。ところが、強盗事件が相次いでいるうえ、偽物とのイタチごっこは変わらず続いている。X氏は「このままでは業界が縮小しないか心配です」と、話す。店員が疑心暗鬼にならずに接客できる日が、一刻も早く訪れるように願ってやまないのだが……。
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