トランプ大統領就任でインフレ再燃の恐れも…投資が消費を抑制するという「NISA貧乏」批判の本質的な間違い
昨年、新NISAがスタートしたことで一般家庭でも「投資」がより身近な存在になった。一方で、家計の円建て資産が外貨性資産へとシフトする「家計の円売り」が進み、投資にお金を回すために消費を抑制する「NISA貧乏」という言葉が話題になっている。果たして、投資のせいで貧乏になっているのか――。気鋭のエコノミストはそこには本質的な間違いが潜んでいると指摘する。【唐鎌大輔/みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト】
前年比2.5倍となった2024年の「家計の円売り」
岸田文雄前首相が旗を振り、資産運用立国元年とも呼ばれた2024年だったが、その滑り出しは上々と言えるものであった。財務省が公表する「対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)」には新NISA稼働に伴う「家計の円売り」を判断する指標がある。それが投資信託委託会社経由の対外証券投資であり2024年通年で+11兆5069億円に達した。
この数字は2023年通年(+4兆5447億円)の約2.5倍に相当し、資産運用立国に向けた施策の効果が現れたと言って差し支えない。つまり、新NISAの推進により、家計の保有する円が投資信託運用会社などを通じて、外貨などに移っていったのである。
本稿執筆時点では2025年初月の数字が出そろっていないものの、いわゆるオルカンと呼ばれる三菱UFJアセットマネジメント社の運用する「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や同社の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が極めて大きな資金流入先として国民を惹きつけていることは既報の通りである。
2025年も家計による旺盛な海外投資が続きそうなことを予感させる数字だ。
2024年に記録した10兆円を超える買い越し規模が常態化するかどうかは別として、非課税枠が新規設定されている以上、それをインセンティブとした対外証券投資は相応の規模が持続するはずである。しかし、旺盛な投資意欲の裏側でその原資に着目した議論も目立つようになってきている。
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