「踊る」青島と和久さんのモデルは“ハリウッドの名バディ” 亀山Pが明かす大ヒットは「何もないお台場が舞台だったからこそ」

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劇中で懲罰委員会の舞台となったのは、フジ新社屋10階の会議室

「恋愛ドラマをやるなら、と考えたとき、織田さんには、『東京ラブストーリー』という傑作がある。加えて、僕自身も前年(1996年)に『ロングバケーション』をプロデュースし、やり切った感があった。では、群像劇を描くドラマはどうだろうと考えると、すでに『あすなろ白書』『若者のすべて』といったドラマをプロデュースしていた」

 手を付けたことがないものの中で、やってみたかったこと。それが刑事ドラマだったと語る。

「僕は『警視庁物語』という映画が好きだった。その影響もあって、1988年と1990年に『男たちの熱い夜』という2時間の刑事ドラマを企画したんです」

『男たちの熱い夜』は、田舎の所轄に左遷されたキャリア組の署長(根津甚八)と、その場所へ墓参りに訪れた警視庁捜査一課の刑事(小林稔侍)を描いた物語だ。二人の設定に、「踊る」ファンなら思うところがあるのではないだろうか。

「『男たちの熱い夜』は単発の企画だったので、いつか連ドラで刑事ドラマをやってみたいという気持ちがありました。そうした思いを織田さんに伝えたことを覚えています」

 亀山プロデュース作品は、オープンセットが舞台となることが珍しくない。

 例えば、『若者のすべて』の舞台となった京浜工業地帯は、巨大オープンセットとして再現し、『ロングバケーション』の瀬名秀俊と葉山南が暮らすシェアハウスは、取り壊しが決まっていた隅田川沿いのビルを、自由に造り替えることでドラマに合致する空間へと変えた。『あすなろ白書』に登場する大学キャンパスは、東宝撮影所に建てられた広大なオープンセットだった。

「『踊る大捜査線』はコメディベースなので、カメラがセットの中にバンバン入り込む、テンポの良い動きのある画にしたかった。そのためには自由が利く広大な屋内セットが必要になるわけですが、僕たちにはがらんどうの新社屋があった。これをそのままセットとして活用すれば、面白い刑事ドラマが作れると考えた」

 現在の 22階にあるフォーラムは、劇中では会議室に。10階にある大会議室は、懲罰委員会の舞台としてセットを組んだ。「今は一切貸してくれませんけど」といたずらっぽく笑うが、持て余すほどの自前のスペースがあったからこそ、「踊る」特有の動きのある画は生まれた。

「謎解き」を突き詰めても「古畑任三郎」には敵わない

 一方で、陸の孤島であるがゆえに問題がないわけではなかった。

「お弁当を頼むにしても、『そんな場所まで運べません』と断られることも少なくなかったし、タクシーもまったく止まっていない。お台場の存在が認知されていないから、タクシー運転手ですら『それってどこですか?』と言われてしまうほどです」

 まだほとんど誰にも知られておらず、建物すら少ない。。ということは、この地域に暮らす住人も当然少ないことが予想される。人が少ないのだから、大げさな事件は起こらない――。こうして湾岸署の設定はできあがっていった。

「何もないわけですよね。つまり、毎回殺人事件が起こるような署ではない。ただ、所轄には刑事課はあるし、地域課や交通課といった部署もある。こうした働く人たちを躍動させながら刑事ドラマを作ろうと。くしくもフジテレビには、一人で事件を解決してしまうスーパー刑事である『古畑任三郎』がいた。謎解きをしても、古畑さんにはかなわないですから(笑)」

 また、犯人を追うようなドラマにすると、「犯人(役)にスポットライトが当たるため、既視感のある刑事ドラマになってしまうと危惧した」とも付言する。

「動機や背景を無視することができなくなるため、どうしても犯人のボリュームが大きくなる。そうなると、織田さんをはじめレギュラー陣が霞んでしまう。あくまで主役は織田さん演じる青島俊作です。その青島君を引き立てる存在は犯人ではない、他の何かが望ましい。たどり着いたのが、4万人以上いる警視庁、その中でもエリートと言われるわずか200人ほどのキャリア組だった」

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