日本画の最高峰「院展」元理事が告発「理事会に“盗作作家”の濡れ衣を着せられた」「偶然構図が似ただけなのに」
「富士山を描けば似通った絵が出てくるのと同じ話」
22年前、國司氏はこの作品で「春季展賞」を受賞した。その時、すでに同人だった梅原氏は審査員として國司氏の作品を見ていたが、梅原氏は審査した記憶さえないという。
「毎年『春季展賞』候補作は35点くらい並べられ、その中から30分位の時間で選ぶのです。なんせ22年前の話ですし、他にも絵は毎年数千点くらいは見ています。賞を獲ったとはいえ特段、画壇で話題になった作品でもなかったですし…」
だが2つを見比べて似ていると言う人がいることは理解できると話す。
「女性の座り姿の構図が似ていると言われるのは分かります。ただ同じような対象を描く場合、構図が似通ってしまうことはよくあることなのです。富士山を描けば似通った絵が出てくるのと同じで、今回は偶然にも、2人ともフレアスカートを履いて座っている平凡なポーズの女性を対象にしてしまっただけの話。女性が座った姿を描くとなると、よほど奇抜なポーズでなければ似るものでしょう。ただ私自身は2つの作品は表現として全く異なるので、似ていないと考えています」
女性の人物画を描くことを得意とする梅原氏はこの作品の着想を、座り姿の菩薩から得たと話す。菩薩を擬人化するにあたって、ポーズは雑誌に掲載されていた女性モデルの写真を参考にしたという。
写真を見せてもらったが、フレアスカートをまとった女性が森の中で腰掛けている写真だった。ただ写真の女性は手を後ろに回していて作品とは明らかに違う。
するともう一枚、参考にしたという雑誌の切り抜きを見せてくれた。こちらは長袖のシャツ、長袖のズボンを着用した髪の長い女性が椅子に座っている写真で、腕をクロスしている様は作品にそっくりだ。
確かにこの2枚を掛け合わせてあの作品が出来上がったという言い分は理解できるものだった。
「実は下書きの段階では実際の作品よりスカートは大きく膨らんでいた。ただ実際描き始めるとスカートのボリュームが大き過ぎて背景と合わなかったので、スカートの一部を白く塗り潰しました。足の幅も最初は開いていたのですが、妻から『女性なのに大股開きで座っているのはおかしい』と指摘が入って縮めました。色々な偶然が重なり、結果として國司作品の構図、ポーズに近づいていってしまった」
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