「清原正吾」指名漏れの裏で…慶応大野球部の“成績低迷”にあった「意外な理由」 「プロに行くより難しい」と言われる所以とは

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AO入試が難しい…!

 2020年には中京大中京のエースだった高橋宏斗(現・中日)がAO入試に不合格となり、その後ドラフト1位でプロ入りして話題となったが、この年は高橋以外にも多くの有力な高校生が不合格になったと聞いた。

 そして、その後もAO入試をクリアした強豪高校出身の選手は非常に少ない。一方で、他の大学は、今年で「15年連続ドラフト指名」の偉業を達成した明治大を筆頭に、高校時代に有名だった選手が多く揃っている。ちなみに、慶応大のAO入試が難しくなったと言われる2020年に高校3年生だった世代が、現在の大学4年生だ。入試の難化が、今年の野球部の成績に影響した部分が大きかったことは確かだろう。

 また、慶応高から力のある選手が多く入ってくることは、他の大学にはない強みだが、それについてもマイナスの部分もあるのではないかという。前出のスカウトはこう話す。

「高校も大学も同じメンバーで戦うのは、お互いのことをよく知っている強みもありますけど、やっぱりいろんな面で偏りは出ますよね。大学って、色んなところから学生が集まってきて、お互いに知らなかったことを知り合える点が大きいじゃないですか。野球についてもそうだと思うんですよね。この高校はこういうことをやっていたのか、こういう考え方もあるのか、そういう相乗効果みたいなモノは少なからずあります。それがある特定のチーム出身の選手ばかりがメンバーとなると、生まれづらいみたいなところもあるのではないでしょうか」

来春以降の慶応大は――?

 慶応大のライバルである早稲田大でも、一時期は、早稲田実業出身の選手がメンバーの大半を占めており、同様の現象が起こっていたと聞いたことがある。様々なバックグラウンドを持った選手が集まることは、チームを強くするうえで重要と言えそうだ。

 今年は苦しい戦いを強いられた慶応大だが、“明るい材料”もある。高松商で浅野翔吾(現・巨人)とともに活躍したサウスポーの渡辺和大(2年)が秋のリーグ戦で3勝をマークして、大学日本代表候補に選出された。また、リーグ戦後に行われた1、2年生のみで戦う東京六大学「秋季フレッシュトーナメント」で優勝を果たした。フレッシュトーナメントとリーグ戦の結果は、単純に繋がるものではないが、下級生に戦力となりそうな選手が増えていることは間違いない。
 
 スカウティングがより難しくなった環境で、“陸の王者”は強さを取り戻すことができるのか。来春以降の慶応大の戦いぶりに注目だ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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