「清原正吾」指名漏れの裏で…慶応大野球部の“成績低迷”にあった「意外な理由」 「プロに行くより難しい」と言われる所以とは

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 支配下で69人、育成で54人の合計123人が指名された今年のプロ野球ドラフト会議。プロ入りを志望しながら指名漏れとなった選手は多いが、その中で最もマスコミをにぎわせていたのが、慶応大の清原正吾ではないだろうか。NPB通算525本塁打を誇る清原和博氏の長男で、中学と高校では野球から離れていた“異色の経歴”もあって注目を集めていたが、結局、どこからも指名はなく、11月25日に自身のインスタグラムで野球から引退することを表明した。【西尾典文/野球ライター】

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慶応のスカウト対象者は「0」

 その裏で、気になるのが慶応大の戦いぶりだ。昨秋の明治神宮大会で青山学院大を破って優勝を果たしたものの、今年の東京六大学のリーグ戦では春3位、秋5位に沈み、優勝争いに絡むことができなかった。

 慶応大がBクラス(4位以下)に沈んだのは、2016年春(4位)以来実に17季ぶりである。ライバルの早稲田大が、リーグ戦で春秋連覇を達成したのとはまさに対照的な1年だった。今年の慶応大について、秋のリーグ戦を視察していたNPBのスカウトからはこんな声が聞かれた。

「年初に指名の対象となりそうな選手をリストアップしていくのですが、東京六大学で今年対象者がいなかったのは、慶応と東大だけでした。昨年までは毎年リストアップした選手がいましたから、これは久しぶりのことではないですかね。正直に言えば、上級生だけでなく、下級生を見ても、我々の目に留まるような選手は少ないです。去年の秋にリーグ戦、神宮大会で優勝したのも、エースの外丸東眞(当時2年)の頑張りが大きかった。今年は、外丸が調子を落としていますし、ここまで勝てない慶応も近年では珍しいですよね。堀井哲也監督も相当、苦しかったと思います」(関東地区担当スカウト)

 このスカウトの言葉通り2020年から昨年までの4年間、慶応大からは毎年NPBに選手を輩出しており、郡司裕也(日本ハム)、木沢尚文(ヤクルト)らはチームの主力として活躍している。しかし、冒頭でも触れたように、今年は清原正吾が指名漏れとなるなど、1人もドラフト指名はなく、来年は、現時点では有力候補は不在だ。

スタメンの大半が内部進学の選手

 改めて慶応大のメンバーを見てみると、慶応高から内部進学した選手が主力となっている。9月15日に行われた立教大との試合では、スタメンの9人のうち、慶応高の出身ではない選手は、ショートの斎藤快太(4年・県立前橋)だけだった。

 慶応高は昨年、夏の甲子園で優勝を果たしているように、激戦区・神奈川県のなかで屈指の強豪校であり、中学時代に評判だった選手が多く入部している。前述した木沢以外にも、津留崎大成(楽天)、柳町達、正木智也、広瀬隆太(いずれもソフトバンク)などは慶応高から慶応大を経てNPB入りしている選手だ。ただ、他の東京六大学や東都大学などの強豪チームを見ても、大学の付属や系列の高校出身の選手が、ここまで多数を占めているケースはない。

 それには慶応大ならではの事情があり、ある強豪高校の指導者はこのように話してくれた。

「慶応大はスポーツ推薦がなく、有望な野球部員は『AO入試』で合格を目指すことになります。以前から決して簡単な入試ではありませんでしたが、コロナ禍にあった2020年からさらに難しくなったともっぱらの評判です。高校時代に野球でいくら実績があって、学業もある程度の成績を残している選手でも、『なぜ慶応(大学)に進みたいか』という点をしっかり理論的に面接や小論文で述べることができないと合格しないと言われています。慶応大の野球部としても、何とか力のある選手に入ってきてほしいこともあって、OBの方が受験対策をしてくれるのですが、それでもかなりの難関ですね。ある意味、プロに行くよりも難しいと感じている高校の指導者も多いと思います」

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